ISO9001におけるプロセスアプローチとは?運用方法やタートル図についても解説

顧客のニーズに応えるために事業をおこなうなかで、業務効率化と品質管理の両立に課題を抱える企業は少なくないでしょう。そのような企業にぜひ取り組んでいただきたいのが、ISOマネジメント規格のひとつ「IS09001」の中核となる「プロセスアプローチ」です。
今回は、そもそもISO9001とはなんなのか、そしてプロセスアプローチとはどのような取り組みなのかを紹介します。実際の運用方までわかりやすく解説しますので、ぜひ参考にしてください。

ISOとは?

ISOとは、International Organization for Standardizationの略で「国際標準化機構」のことです。スイスジュネーブに本部があるISOでは、国際的な取引をスムーズにおこなうために、製品やサービスに対して標準的な基準を設ける「ISO規格」を制定しています。たとえばネジのサイズがメーカーごとに違うと不便で汎用性がありません。そのためどのメーカーも、ISO規格に沿って生産しています。
ISOでは製品ではなく、組織の品質活動や環境活動などを管理する仕組み(マネジメントシステム)についてもISO規格を制定しています。多くの社員が働く企業では、規定やルールに沿って業務をおこなわないと効率的ではありません。さらに規定やルールを定めるためには責任・権限の体系を明確にする必要もあります。このような組織の「仕組み作り」に関する国際的な基準を定めたものが、「ISOマネジメント規格」です。
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ISO9001について

ISO9001は、ISOマネジメント規格のひとつとして、顧客に提供する製品やサービスの継続的な品質向上を目的に定められました。製造業においては、大量の製品をいかに効率的に生産するかは永遠の課題です。そのために効果的なのが、品質管理や品質保証です。製造工程において適切に品質管理し、生みだす製品の品質を保証すれば、不良品の発生率を下げられます。さらにはコスト削減や、社内の仕事の効率化にもつながります。
ISO9001の認証を受けていると、品質管理や品質保証が適切におこなわれていると評価され、国際的な取引や顧客の信頼を得られるのも企業にとってはメリットです。

品質マネジメントの7原則

ISOでは、ISO9001の基本理念を理解するために、以下のように「品質マネジメント7原則」を定めています。どのような内容か、順番に紹介します。

  • 原則1:顧客重視
    組織の最終目標は「顧客満足」です。顧客の満足度を高めるためには、顧客のニーズや期待に応え、要望を満たす必要があります。
  • 原則2:リーダーシップ
    組織におけるリーダーは、品質目標の達成に向けての責任を負う存在です。リーダーには、組織内の人々が積極的に参加したくなるような環境構築が求められます。
  • 原則3:人々の積極的参加
    目標達成のためには、リーダーだけではなく組織のすべての人が積極的にかかわることが不可欠です。そのために必要な権限を割り当てるなど、チームメンバーのモチベーションを高めるのもリーダーの重要な仕事です。
  • 原則4:プロセスアプローチ
    目標達成には、組織活動のプロセス単位での管理が欠かせません。各プロセスの関係を把握して、首尾一貫したシステムとして機能させることが重要です。
  • 原則5:改善
    目標が達成できないときや問題が生じたときには、原因を究明して対策を立てる必要があります。問題がないと思われる場合でも、表面化していない問題が潜んでいないか、より良い方法がないかを常に考え改善し続けることが大切です。
  • 原則6:客観的事実に基づく意思決定
    意思決定は、経験や勘といった曖昧なものに頼るのではなく、数値やデータなどの客観的事実に基づいておこないましょう。そうすることによってのみ、だれしもが納得して従います。
  • 原則7:関係性管理
    目標を達成するためには、自社のプロセス管理だけではなく、仕入れ先や外注先などとも良好な関係を築き、協力して取り組むことが大切です。そうすればよりよい製品・サービスが創出され、結果的に顧客満足度の向上につながります。

ISO9001の規格要求事項の構成

ISOの規格要求事項とは、ISOの認証組織が以下の2点を実現するために守るべきとしているルールを体系的にまとめたものです。   

      
  • 一貫した品質・サービスの提供
  •   
  • 顧客満足の向上
  •      

ISO9001の規格要求事項は10項目に分かれており、以下のように構成されています。   
   ISO9001の規格構成

ISO9001では、「4.組織の状況」から「10.改善」までをPDCAサイクルで回転させていくことで、先に挙げた2つの目的実現を目指します。

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プロセスの定義について

ISOでは、プロセスについて「インプットをアウトプットに変換する、相互に関連するまたは相互に作用する一連の活動」と定義しています。わかりにくければ、プロセスとは「インプットとして受け取ったものをよりよいものにし、アウトプットする活動」ととらえるとよいでしょう。普段の業務でも、同僚や仕入れ先などから「材料」「情報」などのインプットを受け取り、それを加工・変換・改善して次の担当者にパスしているのではないでしょうか。つまりあらゆる組織内でおこなわれる活動は、それぞれが「プロセス」なのです。
アウトプットされたものは次のプロセスのインプットとなり、相互に関連しながら流れていきます。そして最終的な製品やサービスを顧客に引き渡し、満足してもらうのが企業活動の目的です。大きなプロセスのなかには、さらに小さなプロセスが内包されているはずです。品質マネジメントにおいては、相互に関連し、つながり、そして流れていく一連のプロセスを、システムとして適切に管理することが求められます。

プロセスアプローチとは?

プロセスアプローチとは、プロセスの相互関係を把握したうえで、事業を運営・管理することを指します。プロセスアプローチは、ISO9001の中心となる概念です。先述したとおり、企業活動は多数のプロセスが相互に、そして複雑に関連しあって進んでいきます。
プロセスアプローチでは、プロセスを一つひとつに切り分け、それぞれに手順や合格基準を定めて管理するのが特徴です。個々のプロセス内でPDCAサイクルを回転させ効率化すれば、全体の流れがよくなります。そうすれば品質マネジメントシステムを、遅滞なく粛々と進行できるでしょう。その結果、企業は良質な製品・サービスを創出できるようになり、最終的な目標である顧客満足向上を実現できるのです。

プロセスアプローチの意義

プロセスアプローチの最大の意義は、実施することで「自工程完結」を実現できることにあります。自工程完結とは、日本の製造業を代表する企業のひとつであるトヨタ自動車株式会社の「品質は工程で作り込む」とする考え方です。これは「自らの工程に責任を持って取り組み、不適合品を次の工程に流さないこと」を意味します。
工程内で不良が発生すると、差し戻しや手直しが必要になります。業務効率が低下するうえ、コストも増大しかねません。完璧ではないアウトプットをそのまま次の工程に流してしまうと、次のプロセスが滞る恐れもあります。最終的に不良品が顧客に流出する可能性もあるでしょう。
そのために、自工程完結を目指す必要があるのです。それぞれの工程において、不良を発生させないようにすれば、問題が発生する可能性を極限まで減らせます。プロセスアプローチでは、プロセスごとに業務手順を明確にし、合格基準を設けます。そのため完璧に仕上がったアウトプットだけを、次のプロセスに流せるようになるのです。
では、自工程完結を実現するプロセスアプローチは、どのように運用するのでしょうか?

プロセスアプローチの運用方法

プロセスアプローチを運用するには、個々に切り分けたプロセスごとに重要な要素を洗い出し、適切に管理する必要があります。プロセスアプローチで重要とされている構成要素は、以下の7つです。

      

プロセスの内容

まずは、プロセスで実行する内容と範囲を明確にする必要があります。プロセスを管理するリーダーとなる「作業責任者」も明らかにしておきます。

インプット

プロセスを実施するための「インプット」となる素材はなんなのか、明確にしておきましょう。プロセスで扱う素材は顧客のニーズや原材料のほか、前のプロセスから受け取ったアウトプットがインプットになることもあります。

<インプットの例>
原材料、顧客のニーズ、前のプロセスから受け取った製品、文書、情報、記録など

アウトプット

プロセスにより生み出されるアウトプットはなんなのかを定義します。アウトプットは有形のものとは限らず、無形のものである場合もあります。

<アウトプットの例>
次のプロセスに引き渡す製品、文書、情報、実績など。最終プロセスの場合は、生み出されたアウトプットが顧客に渡る製品・サービスとなります。

物的資源

プロセスを運用するために必要な物的資源はなんなのかを明確にします。

<物的資源の例>
設備・工具などのハードのほか、ソフトウェアなど。点検記録や有効期限などの情報も物的資源に含まれます。

人的資源

プロセスを実行するためには、人材は欠かせない要素です。プロセスにかかわるメンバーと、それぞれが有しているスキルや資格、受講済の教育訓練などを明らかにします。

実施手順

プロセスアプローチでは、プロセスを適切に進行するために、具体的な手順や方法を定めることは必須です。マニュアルや手順書などを準備しましょう。

評価指標

アウトプットを評価する指標は、明確に定めなければなりません。どの程度の品質で次のプロセスに流すのか、合格基準を設けましょう。

      

タートル図について

プロセスアプローチでは、前章で明確にした各プロセスの7つの要素をタートル図に表します。タートル図とは、プロセスアプローチで用いられる亀(タートル)の甲羅のように見えるプロセス図のことです。タートル図にすると、プロセス間のつながりを視覚的に理解できるようになります。タートル図では、インプット→プロセス→アウトプットの流れを主軸とし、プロセスの実行に必要な残りの4要素を周囲に配置します。

     タートル図

タートル図はプロセスごとに作成するため、社内で統一したフォーマットを作成しておくとよいでしょう。タートル図を作成するときには、ヌケモレが発生しないようにすることが大切です。1人で作るよりも、複数で意見を出し合うほうが見落としやヌケモレを防げます。
なお、タートル図は作って終わりではなく、常に最新の状態に保つことが大切です。定期的な見直しを実施し、使用する設備や組織変更による人員の入れ替え、業務内容や手順の変更などにあわせて更新しましょう。さらに評価指標は継続的にモニタリングし、プロセスが適切に運用されているかを確認することが重要です。

適切な権限管理と業務効率化なら「SmartDB」

ISO9001に基づいて設けた社内規約を従業員に周知し徹底してもらうには、常に最新の公式な規約をすぐに確認できる環境を整えなければなりません。規約の保管場所がわからない、古い情報もありどれが公式のものなのかわからないといった状態では、全社員の遵守徹底は困難となります。全社員への適切な周知と遵守徹底がしやすい環境を整えるには文書管理ツールの導入がおすすめです。
ドリーム・アーツが提供する「SmartDB」は、非常に柔軟なワークフロー機能とWebデータベース機能を持ち合わせた大企業向け業務デジタル化クラウドです。
「SmartDB」によるISO文書管理には下記のようなメリットがあります。

  • 全文検索機能では添付ファイルの中身の情報も含め検索できるため、確認したい規約をすぐに見つけられる
  • 規約文書の公開に伴う承認依頼や承認経路が設できるため、公開レビューが完了した文書だけを利用者に公開できる
  • 文書改訂機能で、旧版を公開したまま、新版の更新・承認処理を実施できる。       

    「SmartDB」の文書改訂機能、ISO9001/14001に必要な仕組みづくりに貢献

  • 更新履歴も記録でき、誤って更新してしまった際にも取り戻し可能。改ざんも防止できる。

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まとめ

競争の激しい市場で生き残るには、業務の効率化を進めながらも高品質な製品・サービスを生み出し、顧客満足を向上させることが必須です。ISO9001を取得すれば、顧客の信頼を得られるだけでなく業務の効率化も実現できるでしょう。
ISO9001では、自工程完結をかなえるプロセスアプローチで、各プロセスを管理することが重要です。さらに作成した文書についても適切に管理・改訂することが求められます。本記事を参考にタートルズを作成し、プロセスアプローチに取り組んでみてください。

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この記事の執筆者:加藤(マーケティング本部)

2017年に新卒でドリーム・アーツに入社。
営業部門やインサイドセールスチームでの業務を経て、現在はマーケティング部門にてコンテンツの作成に従事。物理的な声の大きさだけが取り柄だと思っていますが、文章という形でみなさんのお役に立てる情報をお届けできるよう頑張ります!