「海外DXレポ」第2弾、今回はキャッシュレスについてお話しします。
中国は「電子決済大国」と言われています。キャッシュレス化が進んでいる中国では、買い物がキャッシュレスでおこなわれるだけではなく、なんと「紅包」と呼ばれるお祝い金やお年玉もデジタル化し、ありとあらゆるものがモバイル決済でおこなわれるようになってきています。
今回の「海外DXレポ」では、中国のキャッシュレス事情と動画共有サービス「抖音(Douyin)」などを運営するIT企業、「Bytedance」がおこなったお年玉企画についてご紹介します。
目次
中国のキャッシュレス決済市場の現状
デジタル化の進展によって、近年、キャッシュレスという言葉が大きく注目されるようになってきました。キャッシュレスとは、クレジットカードや電子マネー、口座振替を利用して、紙幣・硬貨といった現金を使わずに支払い・受け取りを行う決済方法のことで、電子決済とも呼ばれます。電子決済とは、「クレジットカード決済」「デビットカード決済」「電子マネー決済」「スマホウォレット(QRコード)」などさまざまな種類があります。中国は電子決済の普及率が非常に高いことが知られています。現在、中国において、モバイル端末でのQRコード決済が主流となっています。
中国の電子決済のサービスとして、 アリババグループが展開する「Alipay」とテンセントが展開する「WeChat Pay」が2大勢力となっており、さまざまな場面で両社のモバイル決済が活用されています。 「Alipay」はアリババグループが運営しているサービスです。2004年に誕生して、中国最大のECプラットフォーム「淘宝(Taobao)」の決済手段として普及しました。「WeChat Pay」は2006年に誕生して、中国版LINEと言われる「Wechat」を手掛ける大手IT企業テンセントが運営しています。どちらもアプリと中国で開設した銀行口座情報を紐づければ、銀行口座から直接、企業や個人、友人との間で金銭のやり取りができるようになります。クレジットカードを持っていない人も利用できるという点が便利です。
また、今モバイル決済が利用できるシーンもさまざまです。 通常のスーパー・コンビニでの買い物、オンラインショップ、食事などはもちろん、電気料金、水道料金などの公共料金のお支払いにも対応しています。さらに、結婚のお祝い金や子供へのお年玉もモバイル決済でやり取りする人が増えています。 この流れに目をつけ、大成功した「抖音(Douyin)」の事例を少し紹介していきます。
中国のキャッシュレス決済市場を揺るがす「抖音(Douyin)」のお年玉企画
「抖音(Douyin)」とは
「抖音(Douyin)」は、中国のByteDance社が開発運営しているモバイル向けのショート動画配信プラットフォームです。海外で大人気となった「Tiktok」は「抖音」の国際版で、中国国内では「抖音」を利用しています。 キャッシュレス、電子決済が普及するということは、購買履歴や支払い情報のデジタル化が進むという側面もあります。そこにビジネスチャンスがあると考え、さまざまな企業が新規参入しました。「抖音」は今年2021年1月にDouyin Payという決済機能をリリースしました。 今回ご紹介したいお年玉企画は、「Douyin Pay」を普及させようとする手段の一つでした。
上記の仕組みで「抖音」のアクティブユーザーを増やすだけではなく、「Douyin Pay」の知名度を高めることも目指しています。冒頭で紹介したように、これまでの中国では「AliPay」、「Wechat Pay」が主流でしたが、「Douyin Pay」の参戦によってデジタル決済市場がどのように変化していくのか気になりますね。
お年玉企画とは
お年玉は中国の春節に不可欠な風習の一つで、電子決済の普及によって、お年玉を電子マネーで送ることが増えました。インターネット大手企業が、この風習を利用して春節にアプリ内でお年玉を配ることも通例になっています。
2021年の春節、「抖音(Douyin)」は20億元(約300億円)を配るお年玉企画をおこないました。 今年「抖音」は「春節聯歓晩会」*(以下、春晩)の独占スポンサーとなり、番組の放送中に12億元(約200億円)のお年玉をばらまきました。春晩の放送中に配布した12億元以外に、さまざまな企画を通じて8億元(約130億円)を配布します。お祝い動画を投稿すること、友達同士でランタンを集めるゲームや、ショート動画とライブ配信を視聴することでお年玉を獲得することができます。 各イベントから受け取ったお年玉はDouyin Payの残高に入ります。獲得したDouyin Payはライブ配信の投げ銭機能(課金)やアプリ内のミニショップで使えます。
*注:春節聯歓晩会は中国中央テレビ局(CCTV)が例年放送する年越し特番です。視聴者数は5億人を超える定番の年越し番組で、その宣伝効果を利用したい企業は多くいます。
日本のキャッシュレス決済市場の現状
日本においても、決済手段のデジタル化はどんどん日常生活に浸透しています。いままで日本のキャッシュレス決済はクレジットカードが主流でしたが、PayPayやLINE Payの新規参入によって、モバイル決済の利用率も伸びてきています。 日本のキャッシュレス決済の普及率は、経済産業省の発表によると、2020年時点で20%程度となっています。これを、2025年までに4割程度、将来的には世界最高水準の80%を目指すというのが現在の日本の方針となっています。
図1:日本のキャッシュレス支配額及び比率の推移 出典:キャッシュレスの現状及び意義
また、「キャッシュレスとお年玉に関する意識調査」によると、過半数の人がキャッシュレスのお年玉に対し肯定的な考えを示しました。 2019年の34%と2020年38%に比べて賛成派は大幅に上がっていきます。 数年後に、日本のお年玉もどんどんデジタル化していくかもしれませんね。
図2:キャッシュレスとお年玉に関する意識調査 出典:ファイナンシャルアカデミー
まとめ
「抖音」のお年玉企画は、春節のお年玉という伝統的な風習をデジタル化したことによって、利用ユーザーに新しい春節体験をあたえました。新型コロナウィルスの影響などで対面でお祝いすることができない時期であっても、お年玉やショート動画でも温かいお祝いの気持ちを十分に相手に伝えることはできると思います。
先日のブログ記事でご紹介した「非接触型店舗」の話では、WeChatのミニプログラムとWeChat Payを通して、スマホ1台で注文から受け取りまで完結できます。 このように、電子決済が利用できるシーンもどんどん増えていきます。
新型コロナウィルスの影響によって日本のデジタル化は急速に進展しました。リモートワークの推進やオンライン会議ツールの普及などが代表例であり、キャッシュレスもその一例です。これから電子決済はどこまで進化できるのか、楽しみですね!日本においても、財布を持たずにスマホ1台で出かけられる日が来るかもしれませんね。
参考: 新浪科技:抖音支付来了,支付宝微信要慌了? 和讯网:抖音支付来了,第三方支付一次大洗牌或来临? 鳳凰網科技:抖音春节将发20亿红包 薅羊毛攻略来了 日本ファイナンシャルアカデミー:キャッシュレスとお年玉に関する意識調査 経済産業省 :キャッシュレスの現状及び意義
この記事の執筆者:楊 溢(プロモーショングループ)
新卒でドリーム・アーツに入社 2021年からプロモーショングループの一員になりました。 記事執筆は初心者ですが、おもしろい海外情報を発信していきたいと思います!