ニューノーマル時代におけるシェアリングエコノミー

「海外DXレポ」、今回はシェアリングエコノミーについてお話しします。
シェアリングエコノミーとは場所・乗り物・モノ・人・スキル・お金をインターネット上のプラットフォームを介してシェア(貸借や売買や提供)をしていく新しい経済の動きを指します。日本語では共有経済と表すこともあります。
今回のレポートは、海外のファッションシェアリングサービスのDX(デジタル・トランスフォーメーション)事例を交えながら、ニューノーマル時代におけるシェアリングエコノミーについてお話しします。

シェアリングエコノミーとは

シェアリングエコノミーとは、インターネットを介して個人と個人・企業等の間でモノ・場所・技能などを売買・貸し借りする経済モデルです。
シェアリングエコノミーが普及した背景には、まずインターネットの普及とIT技術の進歩があります。今は誰でもインターネットを介して他人同士と簡単に繋がることができます。ソーシャルメディアの普及によって、人々のコミュニケーションは時間・空間に囚われずに、スマートフォン一台で完結できます。また、スペース・モノ・ヒト・カネなど有形・無形のものが、スマートフォンを通じてリアルタイムに共有できるようになりました。オンラインでの決済も安全におこなえるようになり、シェアリングエコノミーのような新たな発想に基づいたビジネスモデルが実現可能となりました。
シェアリングエコノミーサービスといっても、さまざまなジャンルや業態があり、シェアリングエコノミー協会ではシェアリングエコノミーサービスの領域を主に以下の5種類に分類しています。

  • モノのシェア(フリマ・レンタルなど)
  • 空間のシェア(ホームシェア・駐車場・会議室など)
  • 移動のシェア(カーシェア・ライドシェア・シェアサイクルなど)
  • スキルのシェア(家事・介護・育児・知識など)
  • お金のシェア(クラウドファンディングなど)
5種類

出典:シェアリングエコノミー協会

シェアリングエコノミーは海外の一部の国を中心としてグローバルに利用が進展し、また市場規模が拡大してきています。PwCの実施した調査では、シェアリングエコノミーの各国合計の市場規模は、2013年に約150億ドルでしたが、2025年までに約3,350億ドルまで拡大すると予測されています。

規模

出典:PwC「The sharing economy – sizing the revenue opportunity」

ファッションシェアリングサービスとは

今回のレポートでは、この5つの領域のなかから洋服のシェアに着眼して、ファッションシェアリングサービスについてお話しします。
ファッションシェアリングサービスは近年話題となっています。ファッションを中心とする従来のビジネスにシェアリングやサブスクリプションを掛け合わせ、新しい価値を創出するDXとして注目されています。
ファッションシェアリングサービスは欧米が先駆けて展開しており、アパレル業界の不況を救う解決策としても期待が高まっています。例えば、米ファッションブランド最大手GAP傘下の「Banana Republic」は、女性向けファッションレンタルサービス「Style Passport」を2019年9月に提供しはじめました。この事業は、会社の業績への貢献と若年層支持の拡大が期待されています。月額75ドル(約8200円)で、毎月3着の洋服が届きます。具体的なレンタルの流れは以下図のように、お気に入りの服を見つける→借りる→返却となります。レンタルだけではなく、自分のお気に入りのアイテムがあれば、そのまま購入することも可能です。

Style Passport

出典:Style Passportホームページ

中国においても、このようなファッションシェアリングサービスが続々登場しました。今回はアリババグループの投資を受けたファッションレンタルサイト「衣二三(イーアーサン)」について少しご紹介します。
「衣二三(イーアーサン)」は2015年12月に設立し、ファッションレンタル・配送サービスを提供しています。会員登録すれば、毎月499元(約8000円)で1回あたり3~5着のレンタルを、上限回数なしで利用できます。取り扱っている服のブランドや種類が非常に豊富な点も「衣二三(イーアーサン)」の強みです。ARMANI JEANSやPRADAなど国際的なブランドから、PEACEBIRDやLILYなど中国人に馴染みのあるブランドやオシャレなデザイナーブランドまで、連携しているブランドが多いです。そして、2018年9月時点に、「衣二三(イーアーサン)」の登録会員数が1500万人を超えました。

「衣二三」

出典:「衣二三」ホームページ

DXへの取り組み

ファッションシェアリングサービスのDXは近年より一層広がりつつあります。DXを進めるひとつの例として、日本最大級の女性向けの月額制ファッションレンタルairCloset (エアークローゼット)についてお話しします。
airClosetは、パーソナルスタイリングサービスの運営を通し蓄積した実績データをもとに、独自のデータ活用を推進しています。airClosetの特徴の1つとして、あらかじめ同じコーディネートを組んでおくのではなく、完全に一人ひとりにパーソナライズされたスタイリングをすることがあります。日々300名以上のスタイリストが、お客さま一人ひとりへスタイリングを提案していますが、 スタイリストの負担削減やお客さまの満足度を上げるために、AIの活用を推進しています。
具体的な仕組みとしては、AIがお客さまに潜在的にどのようなお洋服が似合うのかを分析し、スタイリストにレコメンドします。そして、スタイリストはAIがレコメンドしたお洋服の中から、お客さまにとって“新しいワクワク”となるようなスタイリングを作り上げます。
airClosetは量産でなく一人ひとりにパーソナライズされたスタイリングなどの“アナログ体験”とデータ解析やAI活用などのデジタル技術を融合し、DXを実現しました。それによって、お客さまのUXを向上し続けます。
しかしながら、ファッションシェアリングサービスは今大きな危機に直面しています。

新型コロナで“明暗”分かれたシェアリングエコノミー

新型コロナウイルス感染症(下記、新型コロナ)によって社会・経済は大きな打撃を受けました。シェアリングエコノミーにも大きな影響を与えました。なぜならば、政府による外出自粛やソーシャルディスタンスの要請は、シェアリングエコノミーの基本コンセプトである「人と人がつながる」「モノや体験・場所を共有する」ができなくなってしまうからです。
特に、ファッションシェアリングサービスに対しては致命的な打撃を受けました。第一の理由としては、衛生面に懸念する方が多いことです。借りた洋服はちゃんと消毒されているかどうかなど、もともと衛生面を気にする方が多いですが、新型コロナが蔓延した後、この問題はさらに重要視されています。また、外出自粛・ロックダウンなどの影響で出かける頻度が下がり、洋服への需要は少なくなりました。リモートワークの推進、イベントやパーティー、旅行が延期・中止になったことで、服のレンタルサービスは利用者が激減しています。
しかしながら、「Uber Eats」などの出前配達サービスの利用者数は大幅に増えています。自分の周りにも、新型コロナ発生後にはじめて「Uber Eats」を利用した友人がいます。新型コロナの影響で、一部のシェアリングエコノミーサービスにはマイナスの影響を与えてしまいましたが、新しいビジネスチャンスも生まれました。

今後はどうなるか?

ニューノーマル時代が進むにつれて、新しいビジネスモデルの創出するために、シェアリングエコノミーに注目する企業が増えています。先程ご紹介したように、シェアリングエコノミーは社会の新しい在り方を提案する一方、多くのサービスが新型コロナによって影響を受けました。
自転車のシェアリングやスマホ充電器のシェアリングの普及など、中国ではシェアリングエコノミーが進んでいると言われますが、新型コロナの影響で中国のシェアリングサービスも大きな打撃を受けました。例えば、先ほど紹介した中国のファッションシェアリングに関して、登場した直後は一時的に注目が集まりましたが、今では倒産する企業も増えています。日本においても、airClosetなどさまざまなシェアリングサービスが展開されていますが、現在の状況下で、こういったサービスが直面にしているのは危機なのでしょうか?それとも、新たなビジネスチャンスなのでしょうか?
ニューノーマルの時代において、今後シェアリングサービスがどうなっていくか注目したいですね。

参考:
第一财经:疫情反复,共享租衣的故事怎么讲下去?
三言财经:衣二三问题不断,共享衣服有未来吗?
未来消費:共享租衣做不了快时尚的救命稻草
総務省:情報通信白書
airCloset:Data Science Collection

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この記事の執筆者:楊 溢ヨウ イツ(プロモーショングループ)

新卒でドリーム・アーツに入社
2021年からプロモーショングループの一員になりました。
記事執筆は初心者ですが、おもしろい海外情報を発信していきたいと思います!