プロセス管理の目的とは?生産性を上げる具体的な方法

プロセス管理は、業務における成果(アウトプット)を最大限に高めるために、それを生み出す過程(=プロセス)を管理する手段のことであり、改善活動にもつながります。そもそも「プロセス」の考え方自体に馴染みが無い方も多いのではないでしょうか?今回は「プロセス」の概要から、プロセス管理を利用することで生産性を上げる具体的な方法をご紹介します。

プロセス管理とは

業務における「プロセス」の指すもの

「プロセス」は日本語で言い換えると「過程」という意味です。あらゆる業務は複数の関係者による、複数の過程を経て最終的な結果を生み出します。つまり、あらゆる事業活動はプロセスによって営まれていると言えます。業務は過程やステップに分解することが可能で、分解した各ステップがプロセスに該当します。各プロセスの粒度は利用目的に応じて変わります。
業務プロセスの例として、営業活動で販促から最終的な受注までの流れを紹介します。営業活動では、「見込客発見・創造→面談(接触)→見積もり→内示→契約→売上」という連続的なプロセスが発生します。その他にも、採用業務では新卒採用や中途採用などで「応募→選考→採用→採用後の入社続き→入社」という一連の流れが、ソフトウェア開発では「要件定義→基本設計→詳細設計→開発→テスト→リリース→改修」という一連の流れが発生し、いずれも複数のプロセスが組み合わさったものとなります。
業務は各部署のプロセスの集約によって成り立っており、プロセス管理は業務における成果(アウトプット)を最大限に高めるために、それを生み出す過程(=プロセス)を管理する手段です。ここでの成果(アウトプット)とは、売上やコスト、納期などが対象となり、プロセス管理を活用することは改善活動にも繋がります。

プロセス管理の上位概念に「ビジネスプロセス管理(BPM)」があります。これは業務プロセスをただ管理するだけではなく、継続的な計測と改善によって生産性を向上させていく業務の管理手法です。特定の業務プロセス全体を管理し継続的な改善を施すことで生産性向上を目指すことができます。

プロセス管理の対象となる業務とは

プロセス管理の対象として最適な業務は以下の観点を満たし、「定型業務」「ルーティン業務」と呼ばれるものです。
  • 作業手順が決まっている
  • 毎日、毎月と定期的に繰り返し発生する
  • 発生件数が多い/頻度が高い

ここでの定型業務には単純作業以外も含まれます。

前述のようにプロセスの粒度は利用目的に応じて変わります。たとえば、業務プロセスの例として紹介した営業活動のプロセスは、俯瞰的に見た場合、各企業で同一のプロセスとも言えます。しかし販売する製品や取引先に応じて対応方法や必要な手続きについて着眼した場合には、企業ごと個別のプロセスという扱いになります。

プロセス管理の目的・重要性

ここではプロセス管理に取り組む目的や重要性についてご紹介します。

プロジェクト・業務を安定させるため

プロセス管理に取り組む目的のひとつに、「プロジェクト・業務の安定」が挙げられます。企業活動の成果(アウトプット)は複数のプロセスを経て生み出されます。工程としてのプロセスが意識されず成果主義になると、場当たり的な対応が発生しやすくなります。また事業規模や組織体が大きければ大きいほど、複数の部署やチーム、メンバーが関係するため属人化も発生しやすくなります。場当たり的な対応の発生が発生し、属人化しやすくなるとプロジェクトや業務は不安定となります。
プロセス管理に取り組むことで、各プロセスの改善・最適化がおこなわれ、標準化がおこないやすくなります。それにより属人化も解消され、業務全体が安定するようになります。
また、各プロセスの最適化を通して、ボトルネックを見つけ出し、集中的に改善を施すことで、最小の工数で最大の改善を得られるようにもなります。

業務全体のマネジメントのため

プロセス管理では業務全体を「抜け漏れなく」「適切な粒度」のプロセスに分解します。それによって業務全体のマネジメント・モニタリングが効果的に進めやすくなります。 またプロセス管理では、プロセスごとにQCD(品質・コスト・納期)の基準を明確にし、投下可能なリソース(設備や人的リソース)、必要なタスク(スコープや作業内容)も整理します。その結果、業務全体のマネジメントを、より高精度かつスムーズに対応できるようになる、という効果があります。
業務全体のマネジメントを高い精度で実現するためには、特に「調達・仕入れ(プロジェクトや業務の遂行に不可欠な資材の調達)」、「関係者(各プロセスで影響を与える利害関係者)との調整」に関するプロセスの管理を確実に最適化できるかが重要な観点となります。業務全体のマネジメントの観点である「リスク管理」も重要です。プロセスごとにリスクを想定・評価し、致命的なリスクの発生を抑止できるかが、業務の成否を左右します。プロセスごとにリスクを想定・評価することで、抜け漏れなくリスクを把握できるほか、有事の際も迅速に対処することができるようになります。より高い精度でのリスク管理を実現するためには、事前の洗い出しと対応策の検討に加え、継続的なモニタリングをおこなうことが重要となります。

また、プロセス管理は生産性向上のためにも重要です。生産性向上がもたらすメリットや取り組みにあたってのポイントはこちらの記事で解説しています。あわせてご覧ください。

生産性向上とは?業務改善のポイントや成果を上げる方法を解説

プロセス管理のメリット

前項でも一部触れていましたが、ここではプロセス管理に取り組むメリットについて、より具体的に触れていきます。

ボトルネックが明確になり、結果・成果の改善につながる

業務はプロセスの組み合わせであり、1箇所の非効率に全体が影響を受けます。改善したい結果(成果)がある場合に、それを生み出すプロセスを整理して、各ステップを分析することで全体のどこに問題があるのかを明らかにできます。各プロセスの問題を整理することで、業務プロセス全体のうち最も進行の遅れ・停滞をもたらす「ボトルネック」が見えてきます。そのボトルネックの改善が生産性や効率の向上につながります。

属人化を防げる

属人化とは、特定の担当者以外が業務の内容を把握していない状態や担当者不在の場合に他のメンバーが業務代替できないような状態を指します。属人化は主に業務プロセスが明確化しておらず、各タスクで実施するべき作業内容やゴールが曖昧になっていることに起因するケースが多いです。プロセス管理を通して、各プロセスで実施されているQCDの定義、作業内容やゴールを明確化することで属人化を解消できます。

進捗管理しやすくなる

プロセス管理に取り組み、各工程に投下できる期間や工数、期限を明確化できるようなることで、業務全体の進捗状況をリアルタイムで把握しやすくなります。進捗遅れや実施漏れを迅速に検知し、リカバリがしやすくなるため、リスク管理の観点ではトラブルの早期発見、課題の特定という点でも効果があります。

イレギュラー対応もパターン化しやすい

定型業務において想定外のケースへの対応を「イレギュラー対応」と呼びます。イレギュラー対応が発生した場合、社内で対応が型化されておらず、場当たり的な対応が増える傾向があります。しかし、過去のイレギュラー対応を精査してみると、ある程度パターン化できることがあります。イレギュラーケースに対しても、プロセス管理の視点を持ち続けることで、蓄積したケースを整理する機会が増え、ひいては業務の型化や標準化の機会を増やすことにつながります。

プロセス管理の方法

プロセス管理は以下の方法で進めていくのがおすすめです。

プロセス管理のゴールと要件を明確にする

まずプロセス管理に取り組む目的とゴールを明確にしましょう。ゴールには定量的な数値目標を設定するのがおすすめです。具体的な数値目標を設定することで、途中経過としての成果を評価しやすくなり、プロセスごとのKPIを設定することができるようになるからです。また、ゴールに具体的な数値を設定することで、プロセス管理に取り組むこと自体が最適なのかの見極めができるようにもなります。

プロセス管理の対象となる計画を明確にする

プロセス管理の対象とする業務の規模によっては、計画を明確化することをおすすめします。計画を明確化することで実行可否を検討しやすくなります。また、社内での稟議や部署横断との連携が必要な場合には、計画を元にプロジェクト計画書など成果物を用意すると、実行可能な計画であることが伝えやすくなり、協力も得やすくなります。 実行可能な計画に落とし込む際には、目的、ゴール、スケジュール、関係者、対象範囲(スコープ)、懸念事項(リスク)を明確にするのがおすすめです。是非お試しください。

業務フロー図(ワークフロー図)・作業手順書を作成する

次に、業務プロセスの基準となるドキュメントを作成しましょう。ドキュメントには、業務フロー図(ワークフロー図)や作業手順書が該当します。各ドキュメントは現場メンバーに業務ヒアリングをしながら作成しましょう。業務フロー図(ワークフロー図)とは、業務内容や業務の判断及び処理の方法を視覚的に表現する図のことです。フローチャートという「物事の流れ=プロセス」を図や矢印で表す方法を用いて作成します。
ワークフロー図をわかりやすく書くコツと具体例

作業手順書とは、業務の流れをステップごとに詳細にまとめたもので、マニュアルの代わりに使われることもあります。作業手順を具体的に表現します。

現場メンバーからのレビュー・プロセスの最適化

ドキュメントを作成したらヒアリングをした現場メンバーに必ずレビューを依頼しましょう。ドキュメントをもとに、全体を俯瞰的に見ると、ヒアリング時には伝え漏れた点を思い出して追記・修正が発生する場合がよくあります。またレビュー時には現場メンバーでないとわからないような、通常対応とイレギュラー対応の整理が正しくできているかも確認しましょう。現場メンバーによるレビューが完了したら、現時点で考えられる最適なプロセスとなっているか、業務標準化を意識しながらプロセスの最適化をおこないましょう。
プロセスの最適化には業務設計と業務整理の考え方が重要です。よければ以下の記事もご覧ください。
業務整理の3つのポイントとは?
業務設計の基礎知識と進め方について

実行・管理

プロセスの最適ができたら、作成したドキュメントに従って業務プロセスを管理しましょう。プロセス管理にあたって業務プロセスが刷新されている場合は、不慣れや考慮漏れなどから開始当初はミスやトラブルが発生する確率が高くなります。業務プロセスの変更箇所が多い場合は、いきなり新しいプロセスで業務を始めずに、段階的な移行や、仮想業務でのテスト運用など、安定して稼働できるような工夫が必要です。また進行管理にあたっては、進行管理表や進捗管理表を用意しておくと状況を把握しやすく、混乱せずに対応することができます。
いくら精度の高い計画を立てたとしても、計画通りにプロジェクトが進むことは、稀です。計画と実績には、必ずギャップが発生し、実行した経験によって新しく学んだことを随時、計画に反映していくことこそが大切だと考えましょう。継続した改善こそがプロジェクトの成功につながります。

 

プロセス管理はツールを導入するとスムーズに進行することも

  

プロセス管理を支援するためのツールも存在します。たとえば、定型業務をプロセスとして管理し、定型業務の「マニュアル」「進捗状況」「作業の記録」を一元管理できる仕組みを提供するシステムです。業務プロセスとマニュアルを同時に管理することで、業務の見える化・標準化の実現につながります。属人化を防止するとともにミスや遅れをなくし、管理者・担当者の負担を軽減にもつながります。ツールを活用することで、業務プロセスが想定どおりに機能しているかの監視、継続的な業務の改善や最適化をスムーズに進行させることができるので、プロセス管理に取り組んでみようと考えている方は、導入を検討してみてはいかがでしょうか?

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この記事の執筆者:冨田(プロモーショングループ)

2013年新卒入社。文系出身でプログラミング未経験者ですが、過去にさまざまな業務・業種・立場の方のお客様の電子化/デジタル化を支援させていただきました。その経験を通じてSmartDB(スマートデービー)があらゆる企業の業務の効率化に貢献できると感じています。ITスキルがない人でも「自分たちの業務も自分たちで電子化/デジタル化できる!」ということを実感してもらえるよう、いろいろ検討中です。“自分たち”で“自分たちの業務”の業務で利用するシステムを改善できる楽しみをお伝えしていきます。