生産性向上とは?業務改善のポイントや成果を上げる方法を解説

ビジネスの現場でよく耳にする「生産性向上」という言葉ですが、具体的にどのようなものか皆さんはご存知でしょうか。本記事では、生産性向上がもたらすメリット、取り組みにあたってのポイントや注意点、また「業務効率化」との違いについても解説します。

生産性向上とは?

そもそも生産性とは、「投資した経営資源(ヒト・モノ・カネ・情報)によって、どれだけの成果や価値を生み出せたか」を指す言葉です。 つまり生産性向上とは、限られたリソースを有効活用し、最小限のインプットで最大限のアウトプットを生み出せるようにすることを意味します。

たとえば、従業員が10人で売上高が1,000万円の企業において、従業員を増やさずに売上高を1,500万円まで伸ばすことができた場合、投資している人的リソースは10人のままで売り上げを増やすことができているので、「生産性が上がった」と言えます。

生産性向上の目的

生産性向上が重要視されるようになった最大の要因として、近年深刻化している労働人口減少の問題が挙げられます。日本が直面する社会問題である少子高齢化は加速する一方で、生産年齢人口(15〜64歳)は1995年をピークに減少を続けています。総務省の推計(※1)によると、2017年には7,596万人で総人口の60%を占めていた生産年齢人口が、2040年には5,978万人で53.9%にまで減少するとされています。

※1)出典:平成30年度版 情報通信白書 | 総務省

国内での人材確保が今後さらに難しくなっていくことは明らかなため、少ない労働力で大きな価値を出せるよう生産性向上を実現することが重要性を増してきているのです。
また、国単位での取り組みとして働き方改革なども推進されてはいるものの、世界のなかでみると日本の生産性は低く、競争力が弱いのも事実です。
2021年に発表された調査(※2)では、2020年度の日本の労働生産性(就業1時間あたりで生みだす付加価値)は49.5ドルであり、アメリカ(80.5ドル)の6割程度の水準にとどまるという結果が発表されました。各国との順位で見ると、OECD(経済協力開発機構)加盟国のなかでは38カ国中23位、主要7カ国(G7)のなかに限っては、データ取得可能な1970年以降、最下位の状態が続いています。

※2)出典:労働生産性の国際比較 | 公益財団法人日本生産性本部

このように日本の労働生産性の低さはデータからも明らかとなっており、グローバル社会で市場競争に参加するには不利な状態であることも一目瞭然です。 国際社会で競争力を保ち生き残るには、新しい価値を創出し続けることが求められます。労働人口減少が続く状況下でも、少ない人出でよりよいアウトプットを出しづつけていくために、生産性向上が必要なのです。

生産性向上と業務効率化の違い

「生産性向上」と「業務効率化」は同じ文脈で使われる場合が多く意味が混同されがちですが、実際は「新たな価値を生みだすかどうか」という点で大きく異なる概念です。

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業務効率化は、同じ質の成果を短時間(低コスト)で出せるようにすることを指し、その手法としては、業務のなかの「ムリ」「ムダ」「ムラ」を除き業務を改善する取り組みなどが挙げられます。業務効率化は業務の時間的・経済的コストを減らすことを主な目的としており、新たな価値は生みません

一方で生産性向上は、リソースを有効活用することで、得られるアウトプットを最大化することを指します。業務効率化で生まれたリソースの余白を使い、新たな価値を生むことが生産性向上である、と考えるとわかりやすいのではないでしょうか。業務効率化は生産性向上を実現するためのステップとして欠かせないものですが、あくまで手段のひとつです。本質的に価値を生みだすのは生産性向上の取り組みなので、業務効率化と生産性向上の意味を混同し手段と目的を取り違えないよう注意が必要です。

【参考記事】業務効率化の手法とは?基本的な考え方やアイデアを紹介

生産性向上が重要である理由

上述のとおり、業務効率化はコストを減らし業務の遂行を効率的にすることを目的とした取り組みであり、新たな価値を生みだすことには主眼を置いていません。VUCAともいわれる変化の目まぐるしい世界で企業が存続していくためには、新たな価値を社会に提供しつづけることが求められるため、業務効率化だけ頑張っていても、生産性向上につながらない限り発展は見込めません
業務効率化によってできたリソースを有効活用し、「新たな価値を生みだす」ために生産性を向上させていくことが最も重要なのです。

生産性向上がもたらす企業のメリット

それでは、生産性向上によってもたらされる企業側のメリットにはどのようなものがあるのでしょうか。主なものを3つご紹介します。

コスト削減

生産性向上のためには、新たなことに取り組むための余白を作る必要があり、そのために業務効率化が重要な意味を持ちます。業務効率化でムダを省くことで、これまでと同じ質の成果を少ないコストで創出できるようになるのは大きなメリットです。同じリソースで新しい価値を生みだすことができ、資源の配分を適切な状態に整えることにも役立つと考えられます。

競争力向上

生産性が上がるということは、時間の使い方が変わるということです。業務効率化により今までと同じ業務を短時間でできるようになると、その分できた時間をコア業務・高付加価値業務に充てられるようになります。自社ならではの価値提供にリソースを割けるようになれば他社との差別化につながり、市場での競争力を上げていくことも可能になるでしょう。

人手不足への対応

人材の確保が難しい状況において、成果を出すために人を増やすという手段は現実的ではありません。個人の生産性を上げていくことで社員ひとりひとりが生み出せる価値が大きくなるため、人手不足の課題解決にも大きく寄与します。

生産性向上がもたらす従業員のメリット

ここまでは企業側の観点でご紹介してきましたが、生産性向上は働く従業員の立場から見てもメリットがある取り組みです。主なものを2つ紹介します。

モチベーション、働きがいの向上

繰り返しとなりますが、生産性向上のためにはまず、現状の業務を効率化することが欠かせません。付帯業務や雑務にかかるコストを削減しコア業務に注力できるようになることで、ひとりひとりの生産性も上がっていきます。より価値の高い業務にあたることで従業員自身の成長にもつながり、働きがいを感じやすくなる、業務に対するモチベーションが上がるなどのメリットがあります。こうしてエンゲージメントが上がることでまた生産性が上がるという好循環も期待できます。

ワークライフバランス改善

生産性向上によってこれまでより少ない力で大きなアウトプットを出せるようになるため、長時間労働防止や残業時間減少につながります。働き方改革の推進で、業務量はそのままに残業を禁止にするなど、無理なコスト削減がなされてしまう場合もあるようですが、それは本質的ではありません。ワークライフバランスの改善には、適切で持続可能な方法で生産性向上を実現することが必須となります。

生産性向上における企業が抱えがちな課題

生産性向上の取り組みにおいては、マルチタスク化や個々人の負荷増大、長時間労働の助長などの課題が発生する場合があります。
よくあるのは、生産性を上げようとひとりの社員に過度なマルチタスクを課し、個々の負担を増大させてしまうパターンです。マルチタスクは人によって得意不得意に大きな差があり、また業務によっても向き不向きが異なります。過剰なマルチタスクはかえって生産性を下げ、結果として残業時間が増える、長時間労働が常態化するなどの問題につながり悪循環となってしまう場合もありますので、注意が必要です。
また、トップダウンで現場のモチベーションがついてこないまま取り組みを進めるのも非常に危険です。現場の実情を考慮せず「投資資源はそのままに、アウトプットをとにかく増やす」という無理な目標設定に走ってしまっては、現場は疲弊するばかりです。現状をしっかり把握したうえで、可能な範囲で徐々に取り組みを進めていくことをおすすめします。

生産性向上のために取り組むべき5つのこと

生産性向上のためには、まず業務効率化により、本来やるべきことや価値の高い業務に注力できるリソースの余白をつくること。そして、働きやすい環境づくりにより、従業員ひとりひとりがパフォーマンスを最大限発揮できる状態にすることが肝要です。上記を踏まえ、生産性向上のために取り組むべきことを5つご紹介します。


1業務の洗い出しとスリム化

現状の業務で手いっぱいな状態では、新しい成果を出すこともできません。まずは業務効率化から着手し、新たな価値を生みだす業務をするための余白を作ります。自分の業務範囲だけを見て個別最適な効率化になってしまうと、部署単位・会社単位で見たときにムダが出てしまう原因となるので要注意です。現状の業務をすべて洗い出したら、ほかの人と重複している業務やムダなオペレーション、ボトルネックになる箇所がないかなどをチェックし、業務をスリム化します。

2ノンコア業務のアウトソーシング

業務を洗い出すことにより、コア業務とノンコア業務が明らかになります。リソースは限られているので、本当に自社内でやるべき業務以外はアウトソーシング(外注)するのも有効な手段のひとつです。価値を生まない雑務や煩雑なオペレーション業務などは、手順を見直すなど業務そのものをスリム化することが必要ですが、それでも残るノンコア業務はどの企業にも必ずあるものです。コア業務に集中するための手立てを検討し、有意義にリソースを活用できるようにしましょう。

3ITツール導入

従業員の業務負担を軽減し作業効率アップをはかるうえで、ITツールの導入は欠かせません。生産性を上げようにも、紙とハンコ、エクセルを手放せないアナログな業務にお手上げ状態の方も多いのではないでしょうか。ドリーム・アーツの「SmartDB(スマートデービー)」は、業種・業態を問わずあらゆる業務のデジタル化を実現します。生産性向上の土台となる業務効率化を支えるツールとして、ぜひ導入を視野に入れてみてください。
【参考】SmartDBの機能詳細はこちら

4柔軟な働き方をかなえる制度の導入

働きやすい環境を提供し、従業員ひとりひとりがパフォーマンスを最大限発揮できるようにすることは、生産性向上において非常に重要なポイントのひとつです。働き方の選択肢を増やすことで、さまざまな事情で就業をあきらめざるをえなかった人たちも働くことができるようになり、高い成果を出す社員に長く活躍してもらいやすくなるなどのメリットがあります。

5従業員の教育研修

ひとりひとりの生みだす価値が大きくなれば自然と生産性も上がりますので、個々人のレベルアップが会社のレベルアップにつながることは言うまでもありません。企業活動を推進するのも、価値提供の主体となるのも「人」であることを考えると、会社として研修などの機会を提供することは重要といえるでしょう。ほかの施策と比較すると効果が現れるまでの時間はかかりますが、中長期的・継続的な施策のひとつとして検討してみてはいかがでしょうか。

生産性向上の取り組みにおけるポイントと注意点

ここで、生産性向上の取り組みにあたり意識したいポイントと注意すべきことを3つ解説します。


目的、目標を明示すること

生産性向上とは抽象的な概念であり、業種・業態によって「生産性」がなにを示すかは異なります。同じ企業内においても、部署や各個人によってとらえ方が変わる可能性もある曖昧な言葉です。取り組みの成果を出すためには、自社においての「生産性向上」がなにを指すのか、なんのために取り組むのか、定義と目的を明確にすることが必須となります。成果はKPIで管理するなど、定量的な変化が目に見えるように客観的な指標で明示することも大切です。

トライアル&エラーを繰り返しながら進めること

生産性向上の取り組みは、一朝一夕で効果が出るものではありません。さまざまな方法を試し自社に合った方法を探るステップも必要ですので、トライアル&エラー前提で長期的に取り組みましょう。そのためには、PDCA(Plan:計画、Do:実行、Check:評価、Action:改善)を高速で回す環境と仕組みを作ることも必要です。ある部署で取り組んだ施策の成果が出なくても、ほかの部署では同じ施策が効果を発揮する、ということも往々にして起こります。全社的な情報共有がスムーズにできる仕組みを整えましょう。全社部署横断で利用できるドリーム・アーツの「SmartDB」は、このようなニーズにもお応えしています。

常に「全体最適」を考えること

業務効率化にばかり目が向いてしまい肝心の生産性向上までいたらない、個人の範囲で業務が最適化され全社的にみるとムダが多いなど、部分最適に陥りがちなので注意が必要です。ひとつの部署や個人の単位で成果を出すことももちろん重要ですが、会社の利益につなげるためには組織全体で生産性向上を実現することが求められます。常に全体最適を念頭に置き、業務の見直しや注力すべき業務の見極めをおこないましょう。

まとめ

今回は生産性向上について、企業側・従業員側双方から見たメリットや取り組みにおける注意点、業務効率化との違い等についてお伝えしました。
業務効率化と生産性向上は別物ですが、どちらか一方だけ単体で成り立つことはなく、どちらも両輪で進めることが取り組み成功の重要なポイントとなります。この機会に自社の取り組みを振り返ってみてはいかがでしょうか。
また、記事中でご紹介しましたとおり、ドリーム・アーツの「SmartDB(スマートデービー)」は業務効率化に有用なサービスです。ご興味をお持ちの方は、ぜひ資料をご覧ください。

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この記事の執筆者:髙橋(マーケティング本部)

2017年新卒入社、HRDevelopmentグループにて新卒採用を中心とした人事業務に従事したのち、2022年1月よりマーケティング本部に参画しました。これまでの経験も活かしつつ、みなさんの業務が少しでも楽になるような情報をお届けしたいと思います!