皆さんはVUCAという言葉をご存知でしょうか?VUCAは「将来の予測が不可能な状況」を意味する言葉で、昨今ビジネスシーンにおいてよく耳にします。
今回は、そんなVUCAの時代ではどのようなことが起きるのか、組織と個人それぞれでどのような準備をしていくべきなのかをご紹介します。
VUCA(ブーカ)の語源とそれぞれの意味
VUCAとは
VUCAとは、「Volatility」「Uncertainty」「Complexity」「Ambiguity」という単語の頭文字を取った単語で、不安定で不確実で複雑で曖昧な状況を示します。
VUCAは軍事用語に由来し、冷戦が終結した後の複雑化した国際情勢において、戦局の見通しがしづらい状況に対して使われていました。そんなVUCAが私たちのようなビジネスパーソンの間でも一般的になったのは2010年代から。「将来の予測が困難な状況」という意味で使われるようになりました。
そこから10年以上が経過し現在にいたるまで、世界ではさまざまな事が起こりました。ITやAIなどの技術革新のほか、政治不安やテロ、自然災害、コロナウイルスの流行などによって、世界はますます速いスピードで変化しています。まさに現代は、VUCAのその先「SuperVUCA」の時代に突入してきていると言えるでしょう。
SuperVUCAの時代では、不安定で不確実で複雑で曖昧な状況が続き、常に変化していくことを前提に考え、これまで以上に個々人が自律して行動していかなくてはなりません。
各頭文字の意味
VUCAについて考える前に、まずはその頭文字の意味をもう少し詳細に解説します。
前述のようにVUCAは「Volatility:変動性」「Uncertainty:不確実性」「Complexity:複雑性」「Ambiguity:曖昧性」の頭文字をとった言葉です。4つの頭文字からわかるように、まさに「明日なにがおきるかわからない、予測不可能な時代」を意味します。
各頭文字 | 意味 |
---|---|
Volatility:変動性 | IT技術、消費者のニーズや趣向、価値観など私たちを取り巻くさまざまな事が急速に変化している状況。 |
Uncertainty:不確実性 | 不確実な要素が多く、予測できない事が当然のように発生する状況。 |
Complexity:複雑性 | 社会情勢・技術革新・価値観・その他不確定要素など、さまざまな要素が複雑に絡まりあっているため、単純な解決策を導き出すのが難しい状況。 |
Ambiguity:曖昧性 | さまざまな要素が複雑に絡まり合い、曖昧性に満ちた課題であるため、「こうすれば解決できる」と断言できる絶対的な解決策がない状況。 |
VUCAの時代では、実際にどんなことがおきるのか
想定外のことが起きる
VUCAの時代はあらゆる要素が不確定な要素で構成され、これらが複雑化し予測不可能な時代です。
これまではある程度、過去の経験から推測できていたことでも、技術革新や人々の価値観の多様化により、考えもつかない事態に進んでいくことが考えられます。政治経済、戦争や貧困、GAFAを始めとした巨大企業による支配など、私たちを取り巻く環境は日々複雑に絡まり合っています。SuperVUCAの時代である現代は、想像以上のスピードで物事が不可逆的に変化していきます。
そのため、チームで時間をかけて議論して結論を出し、行動するのではなく、ひとりひとりが自ら自律的に素早く判断し、行動することが求められます。
今までになかったサービスが登場し、市場が変わる
予測困難な時代と言われると、マイナスな面ばかり考えてしまいます。
しかし実は、大きな可能性を秘めた時代であると、前向きに捉えることもできます。不確実なことが多い時代だからこそ、全く新しいサービスが生み出される事も考えられるのです。
事例としては、UberやAirbnbなどのサービスが挙げられます。このように予測不可能な時代だからこそ、ゲームチェンジャーが生まれて新たなサービスや市場が生まれる可能性も秘めています。
これまでの常識が覆される
例えば、これまではオフィスに出勤して勤務することが多くの社会人にとっての常識でした。
しかし、コロナウイルスが流行しはじめてからは在宅勤務が推奨されるようになりました。この他にも、SuperVUCAの時代ではさまざまな常識が覆されています。
10年前の常識は、もはや過去のこと。現在の常識も、更に変化の早いSuperVUCAの時代においては、一瞬にして新しい常識に塗り替えられることでしょう。常に変化し続ける状況にあわせて、自らも変化し動いていく事が重要です。そうしていくことで、新たなビジネスチャンスをつかみ一足飛びに勝ち上がっていくことも考えられます。
VUCAの時代に必要なスキルと準備
DXを実現するデジタルテクノロジーへの理解と検討できる環境
VUCAの時代で生き残るためには、DXの実現は重要な要素です。近い将来に陳腐化してしまいそうなサービスでも、デジタルの活用で新たな価値を生みだすサービスに生まれ変われる可能性もあります。なかには異業種から参入し、デジタルを活用して成功する事例もあるため、現代においてデジタルテクノロジーへの理解はもはや基礎知識です。
自社でDXを検討するにあたっては、他社が実践しているDX、外部環境の変化の兆し、技術進化の動向についてなどを常に把握・検討し、いつでもチャレンジできる環境やマインドを持つことが重要です。
【DX事例10選】デジタルトランスフォーメーション推進のポイントやメリットを解説
ITを活用したデータの可視化
VUCAの時代では不確実な情報が多いため、今までの勘と経験だけでは間違った判断をしてしまいます。
誤った判断をしないためには、「データに基づいた意思決定」をもとに業務遂行をすべきです。
「データに基づいた意思決定」では、常にデータが可視化され取り出せる状態にしていく必要があります。システムに排出されるデータのほか、日々の業務記録などを自動的に蓄積していくためには、ITツールの活用がおすすめです。ITツールで業務情報を自動的に記録し、デジタル化していけば、後からいくらでも可視化・分析し意思決定に役立てられます。
SuperVUCAの時代はあらゆる事が連続的に変化しつづけます。そうした時代に取り残されないよう、いつでもさまざまな機微をデータから読み取る事が重要です。
パーソナライズ
VUCAの時代では、人材育成の視点も今までとは異なります。従業員を集団でくくって考えるのではなく、個々に向き合う「パーソナライズ」の観点が必要です。昨今は人材の流動化が進み、ビジネスパーソンがより良い条件を求めて転職することは当たり前となりつつあります。
しかし、企業としてはVUCAの時代で生き残るため、優秀な社員をできるだけながく雇用しておきたいものです。そのためには、従業員ひとりひとりの特性、ワークスタイル、価値観に寄り添い従業員エンゲージメントを高めていくと良いでしょう。
VUCA時代の人材に必要な要素
率先して動くリーダーシップ
率先して動くのは、リーダーとして当たり前のことではありますが、とくにSuperVUCA時代のリーダーは、今まで以上に「率先して行動する」ことが求められます。今までにないスピードでさまざまな課題に直面し、瞬間的に判断しなくてはならないこともあるため、リーダー自らが率先して動いて情報を見極めてなくてはなりません。
また、リーダー一人では手に負えないほどの変化に直面することも考えられます。チームメンバーがそうした課題に自律的に取り組めるようサポートするのも、リーダーとして重要なスキルとなります。
テクノロジーの理解と情報収集力
テクノロジーの進化はVUCAの時代において進化の起点となることが多いです。
たとえば、ITを活用することで異業種から突然参入した企業が業界のシェアを奪っていくことも考えられます。
そのため、テクノロジーを含めたさまざまなニュースについて、常に情報収集を行い自社と結びつけて考えていくことが重要です。常に新しい情報を取り入れていくことで、新しいアイデアやより正確な判断をすることに役立てることが出来ます。
変化に臨機応変に対応する力
VUCAの時代では想定外のことが多く発生するため、計画通りに物事が進まないことも多いです。思わぬところに落とし穴があるので、すぐ臨機応変に対処できなければなりません。そのためリスクを常に意識し、対応策をあらかじめ考えておくと良いでしょう。
計画通りに進まないことを前提に計画する、想定しうる最悪のパターンをしっかりとイメージしておくことで、本当に想定外の事態が起きたとしても臨機応変に対応していくことができます。
また、組織内においても変化に合わせて適切な組織変更を検討していくことが大切です。こちらの記事もあわせてご覧ください。
企業を成長させる組織変更と実行時の注意点とは
VUCA時代に適応していく組織のあり方とは
ビジョンを明確にし、従業員に浸透させる
ビジョンが明確に示されていない場合、その場しのぎの対応を重ねることになってしまいます。
そうなると、会社全体で一貫性を持った対応ができなくなるため、顧客サービスのクオリティにも大きく影響してしまいます。「前提は崩れ、変化していくもの」と捉えて行動すべきSuperVUCAの時代においては、ビジョンを明確にし、従業員にしっかりと浸透させることが重要です。緊急事態に上司が不在だったとしても、ビジョンが明確にわかっていれば、従業員レベルでも一貫性をもった対応が可能となります。
スピーディーな経営判断
VUCAの時代ではあらゆる状況が常に変化し続けています。
昨日まで当たり前だったことが、あっけなく崩れて、新しい常識が次々と生まれていきます。そのため、企業はできるだけスピーディーな経営判断となにが起きても対処できる臨機応変さを持つことが重要です。すべてを計画してから実行するのではなく、計画・実行を少しずつ、スピーディーに繰り返すようなアジャイル的な考え方で進めていくのが良いでしょう。
また、会議体や業務プロセスによってスピーディーな経営判断が出来ない場合は、意思決定のルートや業務プロセスのデジタル化などから見直すことも検討すると良いでしょう。
リスクに備えて、常に対応策を考える
社会情勢、テロ、疫病、天災など、VUCAの時代ではいつどのようなこと起こり、どのようなリスクが発生するかはわかりません。リスクが発生してから対応策を考えるのでは遅い場合もあるため、すぐに対応策を実行できるよう準備しておく必要があります。
そのため会社としてさまざまな情報を収集し、いつどういったリスクが発生する可能性があるのかをさまざまな角度から分析しておくのがよいでしょう。また、リスク発生時にすぐ対応できるような組織体制を整えておくことも重要です。
リスク管理の分野ではヒヤリ・ハットというキーワードも注目を集めています。ぜひこちらの記事もご覧ください。
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まとめ
目の前にある課題を解決するにあたって、過去の知識と経験だけでは全く前に進むことはできません。自らが変革を起こし、誰かに相談しても任せきりにはせず、自律的に課題を解決していかなくては、さまざまなリスクに飲み込まれてしまいます。それがVUCAを超えた、SuperVUCAの時代です。 そんなSuperVUCAの時代に企業が生き残るには、DXとDXを実現するための業務デジタル化は必須です。とくに、最前線で変化を目の当たりにしている現場部門のひとりひとりが、前向きにデジタルを活用して業務課題を解決し顧客へ提供する価値を変革(DX)させていくと良いでしょう。
SuperVUCAの荒波を乗りこなすには、全社員が自律的にデジタルをつかった業務改革をする意識を持てるかどうかにあります。社員一人ひとりがデジタル活用を当たり前に感じられ、それを実行できる状態、「デジタルの民主化」を実現できれば、この変化の激しい時代にチャンスを見出し、新たなビジネスチャンスを生み出すことも考えられます。 VUCAを悲観的に捉えるのではなく、さまざまな新しい技術を取り入れて前向きに新しいことにチャレンジしていく。そんな感覚こそが、SuperVUCAを乗りこなすのに必要なマインドなのかもしれません。本記事が、そうした前向きなマインドにつながる一助となれば幸いです。
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この記事の執筆者:上野谷 (プロモーショングループ)
金融機関に新卒入社し、3年間ほど個人営業、法人融資などの業務を経験。
2020年にドリーム・アーツに入社し、本部-店舗間コミュニケーションツール「Shopらん」のマーケティングを担当。
2021年からプロモーショングループの一員になりました。