ノーコードとは?特徴やメリット・デメリット、ノーコードツールの選び方を紹介

プログラミング知識のない方でもWebアプリケーション開発を可能にする「ノーコード(ツール)」。慢性的にIT人材が不足している現代において、大きな注目を集めています。本記事ではノーコードの特徴やメリット、ノーコードツールの選び方をご紹介していきます。

ノーコードとは

ノーコードとは

「ノーコード(No Code)」とは、ソースコードの記述なしに直感的なドラッグ&ドロップの操作のみでアプリやWebサービスが開発できる方法のことです。用意されたパーツを配置するだけで簡単にシステム構築ができます。
これまでのシステム構築には専門スキルを持ったエンジニア、プログラマーがソースコードを使用したプログラムを書く必要がありました。ノーコードはプログラミング知識のない方でもシステム構築を可能にするため、「だれでも簡単にシステム開発ができる」と近年注目されている概念です。 アメリカのGAFAがこの「ノーコード」を主導しており、近年は日本でも多くの企業がノーコード開発を取り入れています。慢性的にIT人材が不足している現代において、非IT部門でも簡単に開発できるノーコードは日本のIT人材不足を解消できる概念として期待されています。

GAFAとは、世界的IT企業である「Google」「Amazon」「Facebook(現Meta)」「Apple」の4つの会社の頭文字を取った言葉のこと

ノーコードツールとは

ノーコードツールとは、ノーコードでシステム構築できるサービスです。プログラミングなしでアプリを開発できるため、気軽にアプリ開発に取り組めます。ノーコードツールが開発される前は、たとえばWebサイトを作るとなると、HTMLなどのプログラム言語を学ぶ必要がありました。、ノーコードツールの登場により、プログラミング知識がなくとも、Webサイトを作成できます。
このようにWebサイトやECサイトやアンケートの作成がおこなえるWeb関連のツールに加え、最近注目を浴びているのがビジネスアプリやスマホアプリなどの開発ができるエンタープライズ向けのノーコードツールです。業務の効率化を目的に、ノーコードツールを導入する企業が増えてきています。

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ノーコード・ローコード開発で抑えるべきポイント

ノーコード・ローコード開発で抑えるべきポイント

ノーコードツール導入後に起こる課題と、それに対するおすすめの解決アプローチを、お客さまの取り組み事例とあわせてご紹介します。

ノーコードとローコードの違い

ローコードとは

ノーコードと混同されやすい言葉に「ローコード」があります。「ローコード」とは、ゼロからコーディングをおこなうよりも少ないプログラムコードで開発ができる方法のことです。ノーコードよりも広範囲な環境での開発が考慮されている一方で、使用する際は、プログラミングに関する知識が一定以上必要になります。

ノーコード・ローコードが注目される背景

近年、ノーコード・ローコードが注目されています。その背景をご紹介します。

世界的な大企業がノーコード開発会社を買収

世界的な大企業によるノーコード・ローコードプラットフォームの買収が盛んにおこなわれたことが、ノーコード開発が注目されるようになった大きな要因です。代表的な例として、GoogleによるAppSheet買収、MicrosoftによるSoftomotive買収、などが挙げられます。そのほかにも、世界のトップ企業のノーコード・ローコード市場への参入などもあり、ノーコード・ローコードが注目されています。

アプリケーション開発の主流化(予測)

世界有数の調査機関Gartnerは、2024年までに世界で開発されるアプリケーションの65%以上がノーコード・ローコード開発基盤で構築されると予測しています。また、アメリカの調査会社のフォレスター・リサーチ社は、2020年に67億ドル(約7300億円)程度だったノーコード・ローコード市場規模が2024年までに145億ドル(約1兆5800億円)にまで拡大すると予測しています。

DX推進、テレワーク導入企業の増加が後押し

DX(デジタルトランスフォーメーション)推進が各企業で推進されており、従来の紙・ハンコ文化や対面でのコミュニケーションを改め、デジタルを活用したペーパーレス化やビジネスのオンライン化が進んでいます。また、新型コロナウイルスの影響によるテレワークも急増し、デジタル活用のためにSaaS(Software as a Service)を導入する企業が増加。SaaSの多くはあらかじめ仕様が決まっており、固有の業務要件に対応できない、もしくは実現のために専門知識やITスキルが必要となる場合があります。ノーコードツールを活用すれば、非IT部門でも自社内でカスタマイズしたアプリ開発ができるため、DX推進・テレワーク導入などに伴うデジタル活用の手段として有効であると認知され始めています。

ノーコード開発のメリット

イメージ通りのシステムを開発しやすい

あらかじめ用意されているパーツやテンプレートを視覚的にドラッグ&ドロップで組み合わせて構築するため(GUI操作)、イメージと実際のシステムに齟齬が起こりにくいです。

開発時間を短縮できる

ノーコード開発では開発やアップデートがタイムラグなしに簡単に実現できるため、急ぎで業務デジタル化したい場面・業務アプリの運用を開始したい場面で役立ちます。

非IT部門の開発戦力化

ノーコード開発は、プログラミング知識のない方でも、ツールを活用することで業務に必要なシステムを手軽に開発できます。そのため、非IT部門を社内の開発リソースとしてカウントできます。それにより、プログラミング知識のあるエンジニアは自社のビジネスにとってより重要で複雑な開発などに集中することができます。
現場部門(非IT部門)で必要なシステム・アプリを開発できることは、企業にとって大きな魅力となります。

業務の要件が正しく反映されやすい

通常のシステム開発では、業務担当者からシステム開発者に仕様・要望を伝える際、認識の相違が発生しがちです。一方、ノーコード開発では、業務を理解しているプロフェッショナルが自らシステム・アプリの開発をおこなえるため、業務の仕様をシステム・アプリに正しく反映させることができます。現場部門自ら業務で利用する仕組みを構築できることは大きなメリットです。

低コストで開発できる

ノーコードツールを利用すると、さまざまなコストを安く抑えることができます。開発に携わる人材コストはもちろん、システム構築などを自社の人材で進める場合に必要となる、プログラミング言語の知識や技術の習得にかかる学習コストを削減できます。
低コストでハイレベルなシステムを簡単に開発することもできる点も嬉しいポイントです。

修正や改善も簡単、カイゼン文化を醸成

ノーコードで構築したあと、システムの細かい修正や改善もドラッグ&ドロップなどで簡単におこなえます。これは、新規事業など、業務プロセスがまだ固定化されていない状況でも役立ちます。業務プロセスの変更があった際でも、現場担当者自らがシステムに反映できるためトライアル&エラーを促進することができ、それにより業務のカイゼン風土育成にも繋がります。
トヨタ式「カイゼン」とは?

ノーコード開発のデメリット

自由度や拡張性が低い場合がある

ノーコード開発では、プログラミングによって制御できる幅が小さく、定型的なことしかできず自由度が少ない点がデメリットとして挙げられます。 プログラミングに慣れた方にとっては、もどかしく感じる点になるかもしれません。
こちらのデメリットを解消するには、先程触れた、ローコードという選択肢もあります。しかし、この方法だとプログラミングスキルが求められる場面が増え、スピーディーな開発ができないという課題もあります。
開発ツールごとに、ローコード開発で実現できる機能が異なるため、選定時は自社で必要な機能がどこまでローコードで開発できるか考慮することが重要なポイントとなります。なかには、要件が複雑になりがちな大企業向けなど、高機能なノーコード開発基盤もあります。導入検討の際は各ツールの機能をしっかりチェックしましょう。

大規模開発・複雑な開発には不向き

ノーコード開発は、元々システム上で用意された機能でしか対応できない場合が多いため、大規模なシステムで要求されることの多い複雑な機能・細かい要件には対応できないことがあります。このような場合は無理に進めようとせず、通常のシステム開発を依頼することで後戻りなくスムーズに開発できます。

プラットフォームに依存する

ノーコード開発では多かれ少なかれ「ツール依存」が発生する可能性があります。 たとえば、各プラットフォームには利用料がかかりますが、その提供元が値上げをすれば従う必要があり、サービスが終了すると開発したものも使用できなくなります。
移行時にもリスクがあります。従来のものと移行先のインターフェイスが統一されていないと、慣れるまでに時間がかかります。また、移行機能がなければ移行先でシステムを作り直す必要があります。
これらのことから、活用事例が多く安定稼働が期待できるツールや社員のITリテラシーにあったツールを選定することが重要です。

ノーコードツールの選び方

ノーコードツール選定の際は、「利用目的・用途」「料金プラン」「対応デバイス」「サポート・マニュアル」を中心に比較していきましょう。

  • 利用目的・用途

    ノーコードツールは幅広い用途に使えるものもありますが、すべてのWebサイトやアプリなどに対応できるわけではありません。ECサイト用・Webサイト用・業務アプリケーション用など用途が限定されたツールが多いです。そのため、ツール選定時は、自社の利用目的・用途にあったツールを見極めましょう。その際、実現できる機能やサポートについても比較して要件を満たしているか確認しましょう。
  • 料金プラン

    無料プランや無料のトライアル期間を設けているノーコードツールもあります。 本格的に導入する前には一部の部署で無料プランを試したり、無料トライアル期間に利用したりするといいでしょう。これにより、目的にあったツールを選びやすくなります。将来有償プランでの利用を検討していても、まずは無料で利用できる機能を十分にチェックしておきましょう。
  • 対応デバイス

    ノーコードツールが対応しているデバイスを確認しておくことも重要なポイントです。たとえば、スマートフォンなどに対応させたい場合は、モバイルデバイス対応のツールを選定する必要があります。
  • サポート・マニュアル

    各ツールのサポート・マニュアルも確認しておきましょう。「導入後に不明点などが出てきた際、すぐに聞けるようなサポート体制が整っているか」、「だれが見てもわかりやすいマニュアルが用意されているか」などはツールを効率よく活用していくためには重要なポイントとなります。 海外のツール導入時には、マニュアルやサポートなどで英語対応が必要となる場合が多くあるので特に注意しましょう。


詳しい選定ポイントは下記の記事でもご紹介しています。
業務デジタル化におけるノーコード・ローコードツールの選定ポイントとは

ノーコードツールの活用事例

大和ハウス工業さま

大和ハウス工業さまの人事部門では、日々多くの事務作業の対応が求められるなか、これらを紙で運用している場合が多く、全従業員18,000名もの書類確認では担当者による目視が必要でした。入社、退職、異動などのシーズンには、作業量が膨大となり、人事部門として戦略的に取り組むための時間を確保することができない状況でした。
そうしたなか大和ハウス工業さまでは、RPAを導入するも、通常業務と並行で人事部門が得られるITスキルでは使いこなせず1年後に撤退。その後、さまざまなツールを検討し、ノーコード開発基盤でありながら、人事部の複雑な業務に対応できる点と、業務担当者が自ら開発できるという点を評価され、「SmartDB」を導入されました。ドリーム・アーツが提唱する「デジタルの民主化」に共感し、実際に協創しながら実現できるイメージを持てた点も大きな採用理由となりました。

大和ハウス工業さまでは人事部門の担当者が主体となって積極的に業務改善に取り組み、通常業務と平行しながらも導入後3ヵ月で10業務、1年後の2021年12月時点では13業務をデジタル化しており2~3年後には現在計画しているすべての対象業務のデジタル化完了を見込んでいます。
大和ハウス工業、18,000名の人事関連業務を3ヵ月でデジタル化

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大和ハウス工業 講演動画

大和ハウス工業さま 講演動画を公開中!

大和ハウス工業さまはプログラミング経験のない、たった10名の人事部員で人事業務のデジタル改革に挑戦されました。動画では、いかにして複数の業務をデジタル化したのか、熱くお話いただいています。ぜひご覧ください!

ヤマダホールディングスさま

家電量販店最大手で全国に12,000店舗以上を展開するヤマダホールディングスさまは、新たな市場を創造することで組織改革を進め、企業のペーパーレス化、デジタライゼーションにもいち早く取り組んできました。

同社は、業務負荷軽減とそれに係る費用削減を実現し、社内申請書類の完全ペーパーレス化を目指されています。そうしたなか、独自性を持った強い現場の業務に対応できるシステムをスピーディーに開発するためには、ノーコードの開発基盤を活用した内製化が不可欠と考え、グループのデジタライゼーションを加速するノーコードツールとして、「SmartDB」を導入されました。現在は全社を対象としてさまざまな申請業務として利用しています。
すでに約60業務を「SmartDB」へ移管しており、その結果、月間約200万円のコスト削減、約1,000時間の作業時間削減が実現できています。今後もグループ会社から利用範囲を徐々に拡大していく予定です。
ヤマダホールディングス、主体的な業務デジタル化を目指し「SmartDB」の本格利用を開始

ノーコードが今後社会に与える影響

新型コロナウイルスの影響で需要が拡大している

新型コロナウイルスの影響で、ノーコード・ローコードの需要は拡大しています。たとえばニューヨークでは、ノーコードツールを活用することで、対応ポータルサイトを短期間で作成することができ、200万食以上の食事の提供、医薬品の寄付の受け入れなどを実現しました。

企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)の課題解決に役立つ

企業が抱えるDXに関する課題解決、DXに立ち向かう組織にノーコードは貢献します。国内企業でDXがなかなか進まない要因として、システムのブラックボックス化やIT人材の不足などが挙げられています。弊社は、継続したチャレンジが必要なDXの実現には、デジタルリテラシーと変革マインドを兼ね備えた人材が必要だと考えています。そこで提唱している「デジタルの民主化」は、最も業務に精通している現場部門(非IT部門)の人材が自らITを活用するという考え方です。
これはノーコードツールを活用することにより実現でき、それにより上記課題は解決可能です。
「デジタルの民主化」DXに立ち向かう組織の絶対条件

VUCA時代を生き抜く基盤となる

既存の価値観やビジネスモデルが通用しない「将来の予測が困難」な時代をVUCA時代と呼びます。このような時代にはトライアル&エラーをしてカイゼンを繰り返すことが重要となります。そのためにはシステム開発や改修に時間をかけずに短期間で進めることが肝心です。また、これまでの業務フローを状況に合わせて柔軟に変更することも重要です。
変更の必要がある事業や業務ではそのような業務プロセスの変更を素早く反映できることが必須条件となります。このように何事にもスピードが求められるVUCA時代を生き抜くためにはノーコードツールが役立つと言えるでしょう。
VUCA(ブーカ)とは何か?不確実性の時代におさえておくべきこと

まとめ

ノーコードの特徴やメリットなどをご紹介しましたが、いかがでしたか?ノーコードツールを活用することで直感的な操作によって簡単にアプリ開発をすることができ、さまざまな面で業務効率化につながることを実感いただけたのではないかと思います。また、変化の激しい現代にはより力を発揮する技術でもあります。
繰り返しになりますが、自社がなにを実現したいかによって導入すべきツールは異なってきます。まずは自社の業務やシステムで実現したい要件を整理して、最適なツール導入を検討していきましょう!

大企業向け業務デジタル化クラウド「SmartDB」は、ノーコード開発基盤として多くの企業の業務改革を実現してきました。概要は下記よりご覧ください。

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大企業における業務デジタル化の課題と、その解決策として「SmartDB」で、どのように業務デジタル化を実現できるのかをご紹介する資料を公開しました。ぜひご覧ください。

マーケティング本部 上野谷

この記事の執筆者:上野谷 (マーケティング本部)

金融機関に新卒入社し、3年間ほど個人営業、法人融資などの業務を経験。
2020年にドリーム・アーツに入社し、本部-店舗間コミュニケーションツール「Shopらん」のマーケティングを担当。2021年からInsuiteX、SmartDBも担当しています。