アイダ設計、非IT部門メンバーが「SmartDB」で契約業務などのデジタル化を実現
年間13万2,000枚の紙と1,655時間の業務時間削減

アイダ設計、非IT部門メンバーが「SmartDB」で契約業務などのデジタル化を実現 年間13万2,000枚の紙と1,655時間の業務時間削減
株式会社アイダ設計

業種 建設/不動産
事業内容 不動産業・建設業・建築設計・土地造成・プレカット加工、損害保険代理業ほか
導入規模 約730ユーザー(2023年4月時点)
従業員数 1,051名
導入時期 2021年9月
TOPICSTOPICS
  • 開発未経験の現場社員で既存業務の見直しとデジタル化を実施
  • 年間約13万2,000枚の紙資料削減と約1,655時間の業務時間削減を実現
  • 内製による業務デジタル化、デジタルトランスフォーメーション(DX)の基盤として全社での活用を検討
 

埼玉県さいたま市大宮区に本社を置くアイダ設計は、1981年に設立されたハウスメーカーだ。現在、国内では宮城県から沖縄県までの広いエリアで、注文住宅および分譲住宅事業を手がけ、年間約3,300棟の契約実績を誇る。設計事務所をルーツとするアイダ設計の特長が、土地の仕入れから、完成、販売、アフターサービスまでを自社で一貫しておこなう「自社一貫体制」である。多くの工程を自社で実施できる体制があることで、プロセス間のコストを下げ、より高品質な商品、サービスの提供に還元できるとする。
2021年に創立40周年を迎えた同社では、次のステップである50周年を視野に、SDGsの達成を目標に掲げ全社規模での取り組みをおこなっている。

「環境に負荷をかけない経営を実現していく上で、各部門における業務のIT化、電子化による紙資源の利用量削減は、解決すべき大きな課題のひとつでした」

そう話すのは、アイダ設計で営業本部担当 常務執行役員、DX推進・SDGs推進担当を務める大槻智輝氏だ。

「紙中心」の文化から脱却し業務効率化とデータの有効活用を目指す

多くの企業同様、アイダ設計においても「紙」の文書に強く依存する業務プロセスと企業文化が根付いていた。近年では、表計算ソフトで作成した帳票なども利用されていたものの、各種申請書の承認回付の過程では、メール添付されたファイル内の帳票を、一度「紙」に印刷し、押印して再度スキャナーで電子化するといった非効率な手順が取られているケースもあったという。

「特に複数の担当者や部門が関係する業務では、デジタル化された情報を、担当者が手入力で別のシステムに再入力する必要があるなど、プロセスの非効率化が進んでいました。また、その結果としてさまざまなデータが各所に分散してしまい、データを統合的に可視化したり、その後のビジネスで活用したりすることも難しくなっていました。」(大槻氏)

営業本部担当 常務執行役員、DX推進・SDGs推進担当

大槻 智輝

同社では、業務の見直しを通じた業務プロセス全体の効率化と可視化、それに付随する紙資源の消費量削減を目指した「デジタル化」に取り組むことを決定する。最初の対象業務に選ばれたのは、注文住宅事業における「間取り見積依頼」の受付業務を含む、顧客情報と連携した「契約管理業務」全般だった。これらは、同社のビジネスにおいて特に重要な業務のひとつだが、その過程には「紙」での作業が多く存在し、効率化が不可欠だった。

デジタル化には、これまで同社で利用していたワークフロー作成ツールの利用も視野に入れていたが、試作の結果、現場として納得のいくものはできなかったという。ツール選定と導入に深く関わった第三設計部次長の田谷友茂氏は、その最大の理由を「自由度の低さ」だと指摘する。

「従来のプロセスでは、表計算ソフトのファイルによる帳票を利用していました。そのため、エンドユーザーの負担が少ない状態でデジタル化を進めるためには、その帳票にできるだけ近い画面をデザインできるツールを使う必要がありました。既存のツールではそれが難しく、より柔軟に帳票がデザインできるツールをあらためて探す必要がありました」(田谷氏)

第三設計部 次長

田谷 友茂

柔軟な画面デザインが可能で現場開発・運用ができる「SmartDB」を採用

田谷氏は、「フォーム作成の自由度」以外にも、日々大量に発生する新規の案件に対して「自動採番」が可能なことや、社外の開発業者などの手を借りずに、業務を熟知している「現場の社員が自ら開発運用をおこなえる使いやすさ」などを条件として新たなツールを探した。最終的に選ばれたのは、ドリーム・アーツの提供する、ワークフロー機能に加え、Webデータベース機能を備えたクラウド型ノーコード・ローコード開発ツール「SmartDB(スマートデービー)」だった。

「SmartDBは、われわれがデジタル化のツールに求めていたさまざまな要件を十分に備えたツールでした。また、ベンダーであるドリーム・アーツのサポートも手厚く、現場での開発運用を実践していく上で、非常に心強く感じました」(田谷氏)

「ツールとしては、実際に業務に関わる現場の社員が“これを使えば改善とデジタル化を進められる”と感じられたものを使うべきだと思っており、SmartDBは、その要件を満たしていました。私も、一連のワークフローにおいてデータを一元管理し、承認プロセスの進捗などを可視化できるようになる点には、強く期待をしていました」(大槻氏)


開発経験のない現場社員が3ヵ月でアプリをリリース

アイダ設計では、複数のステップを通じて段階的に「SmartDB」による業務のデジタル化を進めた。まず、田谷氏の所属する第三設計部、および契約管理業務を担当する営業管理部から数名の担当者を選出し、ドリーム・アーツのサポートを受けながら「間取り見積依頼」および「契約管理業務」のアプリケーション開発に挑んだ。

契約管理業務のアプリケーション開発を担当した営業管理部 管理課 課長の七條志保氏は「これまでにシステム開発などの経験はなく、不安ばかりだった」と当時の状況を振り返る。

「最初は、4人の開発担当者で、これまで利用していた表計算ソフトベースの帳票を見直し、それをSmartDBでどう実現するかを、ドリーム・アーツに相談しながらイメージするところから始めました。並行して、これまでの業務プロセス全体の整理と改善も進めていきました」(七條氏)

営業管理部 管理課 課長

七條 志保

「契約管理業務」と一口に言っても、そのスコープは「契約締結と契約書の管理」のみにとどまらない。商談管理から、契約書の作成、社内決裁、契約締結および保管といった、一連のプロセス全体でのデジタル化、データ連携が不可欠だ。この取り組みのなかでは、「Salesforce」に登録される顧客管理データや、電子契約サービス「CloudSign(クラウドサイン)」と、「SmartDB」との連携も実現していくことになった。

※クリックで拡大

K-TAS画面イメージ

開発作業への着手から、約3ヵ月後には、最初のアプリケーションをリリース。実際に利用するエンドユーザーからのフィードバックも取り入れながら社内で改善と追加開発をおこない、そこで得たノウハウを、次のステップのアプリ開発に活かしていった。徐々に「SmartDB」の開発スキルを高めた開発メンバーは、役割を分担しながら、それぞれが得意な業務領域で開発作業を続けた。

「SmartDBでは“バインダ”という単位でアプリケーションを作っていくのですが、一度作ったバインダで扱うデータは、新たに作成する別のバインダからも容易に再利用や連携ができるようになっています。この仕組みを活用できるようになってから、開発や改善の効率はさらに上がりました」(七條氏)

七條氏は「私たちのようなシステム開発の素人だったメンバーでも、思い描いていた業務プロセスをスピーディーにデジタル化できるようになったことに驚いています。“開発”というと、経験のない人は身構えてしまうかもしれませんが、まずはチャレンジしてみることが大切だと実感しています」と、「SmartDB」によるローコード開発の容易性を高く評価している。

【営業管理部で開発した契約管理業務アプリ】

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K-TAS画面イメージ

「SmartDB」導入の効果

「SmartDB」による業務プロセスのデジタル化に着手し、1年半以上が経過したアイダ設計では、すでにさまざまな形でその成果が見え始めている。



効果1:年間で「約13万2,000枚」の紙削減に成功

目に見える、最もわかりやすい効果としては、依頼書や契約関連書類などに利用されていた「紙」の削減が挙げられる。概算では、年間で約13万2,000枚の紙資源が削減できており「実際には、これ以上の削減効果があったと見ている」(大槻氏)とする。

「SmartDBの運用開始以降、業務現場や担当者の机の上にある紙の量は明らかに以前よりも減っています。実際に“目に見える”デジタル化の成果として、現場の社員にも評価されていると思います」(田谷氏)



効果2:業務プロセスの可視化と効率化

もうひとつの成果は、業務プロセスの効率化だ。大槻氏は「年間で約1,655時間の業務時間の削減が実現できている」と話す。これは、承認ワークフローをデジタル化したことで、紙への出力や回付、押印、スキャナーによる再度のデータ化や、関連システムへの再入力といった作業が不要になったことに加え、アプリケーションの開発時に、既存業務の見直しと整理を並行しておこなったことによる削減効果も含めた数値である。

また、特に「承認業務」においては、「社外でも決裁者の承認作業が可能になったこと」「ワークフローの進捗状況がシステム上で可視化されるようになったこと」も業務効率の向上、承認完了までのスピードアップに大きく貢献していると大槻氏は評価する。



効果3:社内における「デジタル人材」の輩出、デジタルマインドの醸成

「SmartDB」導入のさらなる効果として、大槻氏は「業務のデジタル化を現場で推進できる“デジタル人材”の輩出」を挙げた。当初4~5名規模でスタートした開発者は、現在4部門10名規模の体制に拡大している。

大槻氏は「間取り見積依頼や契約管理業務全般のデジタル化が、目に見える成果を生んだことで、ほかの事業部や組織でも“自分たちの業務において、デジタル化で効率や生産性を上げられる部分はどこだろうか”と意識する文化が育ちつつある」と話した。

「当初は、営業本部関係の業務だけでも、SmartDBを導入すればなんらかの効果があるのではないかと考えていたのですが、実際に開発したアプリケーションが本格的に使われ始めると、承認ワークフローの使いやすさなどから、ほかの事業本部からも“SmartDBはどう使えるのか”といった相談を受けるようになりました。少しずつ、デジタル化に対する社内の意識が変化していることを感じます」(田谷氏)

全社規模の“DX推進基盤”として、基幹システム連携も視野に活用拡大を検討

「SmartDB」は、アイダ設計が現場主導のデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進していくためのシステム基盤として根付き始めている。同社では、DXの実現を視野に入れながら、この新たな基盤の活用範囲の拡大を検討しているという。大槻氏は「これまで、各部門のシステムや現場に散在していた、ビジネスに関わるデータを統合的に蓄積し、可視化できるベースができたことが大きい」と話す。

「現時点では、アイデアの域を出ませんが、たとえば、われわれが建設用地を仕入れる際のプロセスとデータをSmartDB上に乗せ、可視化および分析することも検討しています。そうすることで、仕入れ判断のような、高度なノウハウや経験が求められる業務の属人性を減らし、全体のレベルの底上げにつながると考えています。ほかにも、さまざまな部署で利用している基幹システムにあるデータと、SmartDB上のデータを組み合わせることで、なんらかのシナジーを生み出せるのではないかという観点から、社内にどのようなデータが存在しているのか、棚卸しを始めています」(大槻氏)

導入当初の目的であった、特定業務の効率化、紙文化からの脱却といった課題の解決に対して、「SmartDB」は「十分に貢献していると思う」と高く評価する大槻氏。今回の取り組みで築いたシステム基盤と社内文化を「より広く、全社のビジネス、DX推進へ貢献できるものに育てていきたい」と話した。

「現場の社員が自ら、自分たちの業務を改善するための仕組みを迅速に作り、育てていけるSmartDBの特長は、アイダ設計の強みである、さまざまな業務を内製化することで余計なコストを省き、品質とスピードを高める“自社一貫体制”と通じる部分があると考えています。今後も、デジタル化の推進、DXの実現に貢献する基盤として使いこなしていきたいと思っていますので、ドリーム・アーツには、そのための親身なサポートや情報提供を期待しています」(大槻氏)

※所属部署、役職、インタビュー内容は取材当時のものです。

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