ピグマリオン効果とは?ホーソン効果・ゴーレム効果との違いや活用具体例を解説

「ピグマリオン効果」という言葉は、もともと教育の現場でよく使用されてきた言葉です。しかし、近年はビジネスでも活用していこうという動きが広まっており、主に部下の教育など人材育成の場面で活用されています。今回はゴーレム効果・ホーソン効果などほかの心理効果との違いや、ビジネスにおいてどのような場面で活用できるのか、その活用例などを紹介します。

ピグマリオン効果とは

ピグマリオン効果とは

ピグマリオン効果とは、他者からの期待を受けることでその期待に沿った成果を出すことができるという心理効果のことをいいます。アメリカの教育心理学者ローゼンタール氏が発表した心理学用語で、「教師期待効果」や「ローゼンタール効果」とも呼ばれています。

ピグマリオン効果の由来

ピグマリオン効果の由来はギリシャ神話の物語から名づけられています。

▼ピグマリオンの神話
昔ピグマリオンという王様いました。 彫刻家でもあったピグマリオンは、自分が彫り上げた女性像のあまりの美しさに、心を奪われ、恋をしました。そして、本物の女性に変わってくれないかと切実に願いました。 すると、その姿を哀れに思った神様が、彫刻に生命を吹き込んでくれました。 そしてピグマリオンはめでたくその女性と結婚し、幸せに暮らしました。

この物語の、「心から相手に期待すれば、相手がその期待に応えてくれる」という部分や、「期待が相手に対して良い影響を与える」という部分からとって、「ピグマリオン効果」と命名されました。

逆の考えは「ゴーレム効果」

ピグマリオン効果と反対の効果として、「ゴーレム効果」というものがあります。
ピグマリオン効果が、相手に対して期待をすると、その期待通りになるという心理効果なのに対し、「ゴーレム効果」は相手に対して期待できない、見込みがないと思っていると、本当にその通りの悪い結果になってしまうという効果のことです。ちなみに、ゴーレム効果のゴーレムとは、ユダヤ人に伝わる泥人形のことです。ゴーレムには意思がなく、呪文を唱えると動き出しますが、額の護符の文字を1文字取り去ると、土に戻ってしまいます。このように、ネガティブな影響を受け動けなくなってしまう様子から名づけられました。

「ホーソン効果」との違い

「ホーソン効果」とは、注目を浴びることで、その期待に応えたいという心理が働き、良い結果をもたらす効果のことです。
アメリカのウェスタン・エレクトリック社で行われた「ホーソン実験」と呼ばれる実験で実証され、労働条件や経済的な条件よりも、「注目を集めている」という意識が生産性を向上させるという結果が出ています。
ピグマリオン効果との違いは人の「期待」に限らず、「注目を浴びている」「関心を集めている」という意識により動機付けされる点です。
ピグマリオン効果は、「期待」されることで、その期待に沿った成果を出すというものなので、似ていますが少し異なります。

「ハロー効果」との違い

ピグマリオン効果と類似する用語に「ハロー効果」というものもあります。
「ハロー効果」とは、一部に対する評価を総合的な評価と錯覚して全体に対する評価が歪んでしまう心理効果のことです。別の呼び方では、「ハローエラー」や「認知バイアス」などと呼ばれることもあります。また、ハロー効果の「ハロー」とは、「後光」や「光輪」を意味する言葉です。
ハロー効果は例えば、「顔がかっこいいから、性格もセンスもいいだろう」などと、「顔がかっこいい」という一部に対する評価いついて、拡張して評価・認識してしまう現象です。
ハロー効果は評価する人の中での認識が歪むという現象なのに対し、ピグマリオン効果は、評価する側の認識が評価される側の行動やそれに伴う結果にまで影響を与えるという点が異なります。

ピグマリオン効果の心理学実験と活用法

ピグマリオン効果の心理学実験

1964年、サンフランシスコの小学校で、「ハーバード式突発性学習能力予測テスト」と名付けた知能テストが行われました。
この知能テストは一般的な知能テストでしたが、「将来、児童の成績が伸びるかどうかがわかるテスト」と教師に伝え、その後、テスト結果と関係なくランダムに選定した「成長が期待できる児童」と「期待できない児童」に分けたテスト結果を教師に提示しました。
テスト結果を提示した8か月後に、再度知能テストを実施したところ、ランダムに抽出したはずの「成長が期待できる児童」の成績が向上したという結果がでました。
また、こちらの実験の結果から、ピグマリオン効果は数字に表れる部分だけでなく、勉強に対する自主性などの内面に関わる部分についても、成長を促すことができる可能性があるとわかっています。
これらの結果を踏まえ、ローゼンタール氏の報告では、教師が特定の児童に成長を期待して接したことと、児童も自分が期待されていることを意識したことによりこのような結果になったとしています。

ピグマリオン効果の活用法

ここまでピグマリオン効果に関する基本的な知識について紹介してきましたが、実際の生活ではどのように活用できるのでしょうか?
対人関係、教育、自分自身のモチベーションコントロールなど、実生活での活用場面を紹介します。

部下や後輩の育成

例えば、部下や後輩へのマネジメントの場面でピグマリオン効果を活用できます。
ピグマリオン効果は、「期待を受けることで、その期待に沿った成果を出すよう促す心理効果」のため、活用するには部下や後輩と接するときに、期待していることを伝えるように意識することが大切です。
注意するときにも、「○○がなくなれば、もっと成果を出すことができると思っている」など相手に期待していることが伝わるような表現をすることで、部下や後輩に「自分は良い成果を出すことができる」という意識を持たせることができます。
そのような意識が生まれると、報告、連絡、相談などのコミュニケーションも円滑にできるようになり、高いパフォーマンスを発揮できるという好循環が生まれます。

こどもの教育

ピグマリオン効果はもともと教育現場で活用されている心理効果のため、子育てや学校教育の場においても当然活用できます。ローゼンタールが実施した心理実験のように、こどもにいい成績をとってほしいときなど、効果を発揮する可能性が高いといえます。
ただし、期待通りにいかないときに強く叱りつけたり、過度な期待や理想を押し付けたりすると、むしろ逆効果になってしまうので、注意する必要があります。 結果を焦りすぎず、粘り強く見守る姿勢を示しましょう。

自分自身のモチベーション維持

ピグマリオン効果は、相手に期待をかけるときだけでなく、自分自身のモチベーション維持にも活用することができます。
「自分ならできる」というようなポジティブな言葉を発信したり、目にしたりすることによって、ピグマリオン効果が働き、目標への達成意欲が高めることができます。
何か達成したい目標があるときには、自分の可能性に期待するような言葉を発信したり、紙や電子端末にメモをして目につくところに記したりしておくことでいい結果を出すことができるのではないでしょうか。

ピグマリオン効果をビジネスで生かす具体例

冒頭で、「ピグマリオン効果が近年ビジネスシーンでも活用され始めている」と紹介しましたが、いざ活用するとなるとあまりイメージが沸かないという方も多いと思います。
ビジネスでうまくピグマリオン効果を活用するためには、どのような場面でどのような取り組みをすべきか具体的な活用例を紹介していきます。

裁量を与えることで、期待していることを伝える

仕事を進めていくうえで、「部下のやり方がもどかしいからアドバイスしてあげたい!」と感じる場面は多いのではないでしょうか?
業務をスムーズに進めるために、上司や先輩など経験豊富な立場の人が、細かく指示をだすことは効果的です。
ただ、あまり細かく口を出してしまうと、指示される側に「自分は信頼されていない」という印象を与えてしまう可能性があります。 「部下のことを信頼していないわけではないけど、つい細かく口出ししてしまう…」という方は、ある程度部下に権限をもたせることを意識するといいかもしれません。そうすることで、部下は「信頼されている」という感覚を得ることができ、ピグマリオン効果を上手く活用することができます。細かい指示は出してしまうが、「期待している」「信頼している」としっかり伝えているという方もいるかもしれませんが、口で言われるだけでは部下の信用は得にくくなってしまいます。少し不安な部分、口出ししたい部分があっても「任せる」という行動で信頼や期待を示すことが重要です。

適切な課題を与え、過剰な期待はかけない

ピグマリオン効果は期待を過剰にかけすぎると、逆効果になる場合もあります。
部下に仕事を依頼する場面は多いと思いますが、その際に「能力に合っていないような大きな仕事を任せる」ことは、「過剰な期待をする」ということにつながります。 上手くいけば本人の自信につながりますが、これが失敗してしまえば自信喪失になってしまい、「自分はできない」という意識を持たせてしまう可能性があります。 そうならないように、上司が部下の乗り越えられる課題をしっかり見極め、その人に会った仕事を任せることが重要です。

また、あまり重要視されないことが多いですが、デザインも会社のイメージカラーや業務内容などに合わせて自由に編集できるとさらにいいでしょう。

部下のモチベーションを上げるコミュニケーション

成果に注目して叱咤激励する際に、つい出来ていない部分ばかり触れてしまうということはないでしょうか?
それでは、「自分はだめだ」「期待に応えられない」というマイナスな意識を部下に持たせてしまう可能性があります。できていない部分ばかりに注目するのではなく、出来ている部分にも着目し、褒めるようにすることが重要です。
できていない部分を指摘する場合は、「ここができればもっと伸びる」「君ならできる」「君には期待している」というように言葉で日常的に伝えることが効果的です。
期待を具体的な言葉にして伝えることで、部下のモチベーションの維持や意識の向上につながります。

まとめ

いかがでしたか?
ピグマリオン効果は、個人的な活用から教育、ビジネスまで幅広く活用することができると思います。
実験でも証明されているように、ピグマリオン効果の活用は、社員のモチベーションアップやパフォーマンスの向上、コミュニケーションの円滑化にも役立てることが可能です。人材育成に関わる機会の多い人事担当の方や、マネジメント職の方は是非この記事の内容を業務に役立てていただけると嬉しいです。

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プロモG 伊藤

この記事の執筆者:伊藤(プロモーショングループ)

2021年5月にドリーム・アーツに入社し、 プロモーショングループに配属。
SmartDBやShopらんのプロモーション活動をおこなっています。日々新しいことの連続で、勉強中です!
これからも皆さんの役に立つような情報を発信していきます!