稟議書の書き方とは?基本的なポイントと目的別テンプレートを紹介!

本記事では稟議書の基本の書き方やそのポイント、電子化するメリットについてご紹介します。
稟議を回付してもなかなか承認がおりず業務が滞る、毎回稟議の承認ルートの確認をして回付している、稟議書の管理が大変などの課題をお持ちの方はぜひご覧ください!

稟議書とは

「稟議」とは、個人の権限だけでは決定できない事柄について、会議を開くことなく書面によって関係者や上司から承認・決裁を得るための手続きのことです。主に、契約時や購入時、金融機関であれば融資審査に必要な手続きになります。たとえば、パソコンなど高額な備品の購入、エアコンなどの設備の修理、求人広告など広告宣伝費の利用、特化条件(値引き)で契約を締結する場合などの場面で使われます。
このような稟議を作成・回覧する文書で、複数人の責任者から承認や決裁をもらうための書類を「稟議書」と呼びます。
企業では稟議書のほか、「起案書」「立案書」などと呼ばれる場合もあり、稟議を回覧し承認を得る行為は「稟議を上げる・かける」、稟議が承認された状態は「稟議が下りる・通る」と表現されます。

稟議書と決裁書との違い

稟議と類似した言葉に「決裁」がありますが、この2つは意味が異なります。
稟議は関係者や上司の承認を得るための手続きを意味しますが、決裁は部下からの提案について決定権や権限を持つ上司などが最終的な判断を下すことを指します。つまり、稟議の一部かつ最終工程が決裁です。稟議は複数名の承認を重ねて承認完了(決裁)となりますが、決裁は決定権を持つ1名による承認になります。
また、一般的な稟議の流れは「申請→承認→決裁」ですが、途中に承認を挟まない「直接決裁」というものもあります。こちらは「申請→決裁」という流れになります。

スムーズに承認を得られる稟議書の書き方のポイント

要点を端的にまとめる

稟議書には「目的」「理由」「手段」を明確にわかりやすく記載しましょう。
そのほかにも、タイトル・コスト・得られる効果・考えられる代替案など必要な項目に沿って作成します。必要な項目に漏れがあると承認の流れが止まってしまうため注意してください。作成時は冗長な表現を避け、できるだけ不要な要素は省いて簡潔にまとめることが重要です。基本的には一文目に結論を明記します。承認を得たい一心で詳しく記載したくなりますが、承認者が読みやすいよう簡潔に記載しましょう。承認者の確認負荷が上がると、承認に時間がかかり、通るべき稟議も通らない可能性もあります。
場合によっては箇条書きを使用することも有効です。承認者が見て理解・検討しやすい稟議書を意識し、見せ方に工夫をしましょう。 また、専門用語はできるだけ使わず一般的な言葉に置き換える、使う場合も簡単な注釈を付けるなどして、承認者の理解を助ける書き方を心掛けましょう。

メリット・デメリットの提示

稟議書では、メリットとデメリットを記載し、比較したうえで、メリットが強いことを伝えましょう。主観的な考えでなく、具体的なデータを記載することで説得力のある稟議書を作成できます。たとえば「作業量が削減できる」ことを伝えたいのであれば、「1週間あたり8時間の業務削減になる」と記載すると、メリットをよりイメージしやすくなります。このようにどれだけ効果があるのかを定量的に示すことで、承認者も比較・判断しやすく、稟議を通しやすくなります。
また、メリットばかりを書くのでは、承認者に「冷静な判断に基づいていない」という印象を与えるリスクもあります。申請対象のものがなぜ必要なのかについて、実施にあたって発生するデメリットも踏まえたうえで、それでも実施したい理由を記載しましょう。

マイナス面のカバー

稟議書には、実施時のマイナス要素となるような懸念事項についても言及し、その対策・対処法もあわせて記載するように意識しましょう。あらかじめ問題ないこと、考慮済みであることを示すことができれば、稟議もスムーズに回ります。
承認されないケースの多くは稟議内容の「説明不足」が原因です。承認者も企業に不利益なことは承認できないため、稟議書ではそうした不安を解消しておけば通りやすくなります。回付前に承認者目線で読んでみて、質問されそうな部分については先回りして対策しましょう。

例文やフォーマットを使用する

企業や部署によって定まっている、または慣例的に使われている様式・フォーマットがあれば、それを用いて稟議書を作成しましょう。共通のフォーマットが定まっていない場合は、部署内で統一するだけでも作成や承認が円滑に進みます。承認者も見慣れたフォーマットのほうが読み進めやすく、スムーズに承認できます。
稟議書を電子化し管理を効率化!稟議書管理の課題を解決する方法とは

関係者と事前調整をしておく

書き方ではありませんが、進め方のポイントとして「関係者と事前調整しておくこと」も稟議書を通すうえで非常に重要です。事前に伝えていない稟議書を回付すると、「なにかリスクがあるのではないか」と警戒される可能性があります。ここでいう「事前調整」とは、稟議書を回覧する承認者に、通したい案件について事前に話を通すことです。
稟議書が承認されるかどうかは、関係者との信頼関係がカギです。「この人の提案なら大丈夫だろう」と思ってもらうことが大切になります。稟議のおおまかな要件だけでも業務の合間に少し会話しておくようにしましょう。稟議の承認までには時間と労力がかかるので、このような関係者への事前調整によって成功率を高め、スムーズに回るようにしましょう。

稟議書の記入必須項目

稟議書作成時には以下の項目が必要となります。それぞれについて、必要な項目に沿って簡潔に書くことがわかりやすい稟議書を書く際のポイントとなります。

  1. 起案者・起案日・決裁日
  2. 件名・タイトル
  3. 稟議の目的
  4. 稟議の理由
  5. 金額・コスト

1.起案者・起案日・決裁日

稟議書には「いつ」「だれが」提案したものかを明記します。また、決裁日についても、稟議の内容がその日付から有効であることを示すため書き漏らすことのないようにしましょう。

2.件名・タイトル

稟議書には件名・タイトルはマストです。簡潔に記載することはもちろん、稟議書の内容がイメージできるように件名・タイトルについてはしっかりと考えましょう。

3.稟議の目的

稟議を通すことで得られるメリット・費用対効果を端的に示しましょう。初めて見た承認者にも「必要だ!」と感じてもらえるにはどう書けばいいかを考えるとスムーズに承認をもらうことができるでしょう。

4.稟議の理由

目的を明確に示すだけでは、稟議そのものを正しく理解してもらえるとは言い切れません。「なぜその手段が目的を達成するために必要なのか」を背景や経緯も添えて示すようにしましょう。 たとえば、代替案との比較や、リスクと対処方法についても記載することで承認者は判断がしやすくなります。

5.金額・コスト

見積書を入手するなどして、金額・コストについてはできる限り正確に記載します。説得力をあげるため、予算の内訳や支払い条件なども、併せて記載するようにしましょう。すでに予算編成済みであればそのことを明言すると、稟議は通りやすくなります。

【目的別】稟議書の例文・テンプレート

稟議内容や目的ごとに稟議書のフォーマットを用意しておくことで、必要項目の記入漏れを防ぐことができ、作成の手間も軽減できます。

契約稟議

契約稟議は、「新規取引先との契約を結ぶ際」や「値引き(特価)条件付きの契約を結ぶ際」に必要となる稟議です。企業間の契約締結においては、大きな費用が発生する案件が多くあります。「なぜその取引先が適切なのか」、「取引先が客観的に信用できるか」、「その契約がメリットを生むか」などの観点で承認者を納得させる必要があります。また、コストよりもリターンが大きいことを明示しましょう。その際、数値で計画やリスクを示すことができれば説得力を高めることができます。
値引きに対応する場合も基本的には同様です。なぜ値引きをする必要があるのか、値引きをしてまで契約を結ぶメリットについて、簡潔に記載しましょう。

契約稟議
イメージ:契約稟議書

採用稟議

採用稟議は、採用活動を進めていく上で必要な社内決裁を得るための稟議のことで、求人募集の開始・採用の際に使用します。
採用稟議書においては、採用計画の全体像をわかりやすく明記し、納得してもらうことが重要です。「なぜ増員が必要か」、「採用候補者はどのような人材か」、「どのくらいの期間・コストで採用するか」、「どの部署で採用するのか」という点でそれぞれについて記載する必要があります。また、判断材料として労働条件にもヌケモレがないように注意しましょう。

採用稟議
イメージ:採用稟議書

購買稟議

購買稟議とは、企業として備品購入をする際に必要となる稟議のことです。
こちらの稟議を書く際のポイントとして、「なぜ購入する必要があるのか」、その背景や購入物の種類・必要数とその根拠、購入する物品の詳細を明記しましょう。数量や金額は明確に記載し、コストについてわかりやすく伝えましょう。複数社の見積もり比較を添付するのも説得力のある判断材料になります。
設備修理に関する稟議も同様です。「なにを修理するのか」、「なぜその業者なのか」、その費用について記載しましょう。

購買稟議
イメージ:購買稟議書

稟議書を用いるメリット

直接会うことなく承認を得ることができる

稟議の一番のメリットは、関係者を集めた会議が不要になることで会議に伴う日程調整や会議室の確保などの手間をなくすことができるという点です。会議で説明する時間を省けるため、ほかの業務に割く時間が増えます。また、企業の意思決定となると、ひとつの部署内で完結するケースはあまりありません。他部署や上層部なども関わる承認の場面では、稟議は非常に有効な手段です。

現場の声を組織の上層部に伝えることができる

稟議書を書くのは基本的に現場の社員になります。そのため、稟議書の案件は現場の声を強く反映していることになります。稟議は本当に必要な意思決定が組織の上層部へ伝わるボトムアップを実現する仕組みであるとも言えます。

事実確認の効率化

稟議書は記録として残ります。「いつどこでだれがなにをしたのか」、シンプルにまとめられている点が稟議書のよいところです。会議などの口頭説明ではわかりにくい内容も稟議書にすることで整理され、伝わりやすくなります。部署の上司承認のもと、最終的な企業の意思確認として稟議書を用いる場合もあります。今後の計画を稟議書に記載することで、あらためて上司およびほかの責任者が内容を再確認でき、計画の見通しも立てやすくなります。

稟議を用いることによるデメリット

意思決定までに時間を要する

稟議のデメリットとして「意思決定までに時間がかかりやすい」という点が挙げられます。
稟議書作成の手間や差し戻しによる修正、承認者不在による回覧の停滞などが発生してしまうと、稟議の承認がスムーズに進みません。特に、基幹システムやIT関連機器といった設備投資の場合、必要とする費用も多額になるため、減価償却期間や導入効果および機会損失によるリスクなど、導入する目的や意義を吟味する必要があります。承認待ちにより業務が滞るリスクを避けるためにも、ポイントをしっかり押さえた稟議書を回すことが重要となります。

責任の所在が不明確

稟議の承認は複数人でおこないます。そのため、一人ひとりの責任意識が薄まりやすく、トラブルが発生した場合の責任がだれにあるか不明確で曖昧になりやすいです。あらかじめどのように責任をおくか定める必要があるでしょう。また、基本的に承認者は申請者よりも上の立場の人物であるため、上長・経営層への忖度から責任を追及できないという場合もあります。

稟議を電子化することで効率よく作成~承認!

稟議のデメリットとして「承認まで時間がかかる」とご説明しましたが、ワークフローシステムを導入することで、従来の稟議におけるデメリットを解消し、意思決定の迅速化や精度向上につなげることが可能になります。
ワークフローシステムとは、稟議や社内申請などの業務手続きを電子化するシステムのことを指します。
ワークフローシステムとは

稟議を電子化するメリットとしては下記が挙げられます。

  • 意思決定の迅速化
  • 稟議の作成・検索のスピード向上
  • テレワークでも決裁が可能に

意思決定の迅速化

ワークフローシステム導入により、稟議の申請から決裁までのスピードを迅速化することができます。
ワークフローシステムの導入手順とは?

従来の紙ベースの稟議では、承認者不在による回覧待ちや、誤字脱字などの入力ミスによる修正・差し戻しなどのムダが発生しやすいです。また、稟議書をだれに回付するべきかがわからず、稟議ごとに承認ルートを確認する場合も考えられます。
ワークフローシステムで電子化することで、パソコンやスマートフォンなどのモバイル端末から申請・承認をおこなうことができ、承認ルートの自動判別も可能になります。また、入力内容の自動チェックも可能なので、ヌケモレ・ミスも防ぐことができます。 承認から決裁までの作業を効率化することができるため、結果意思決定スピードを高めることができるでしょう。

稟議の作成・検索のスピード向上

ワークフローシステムによる稟議の電子化は、稟議を作成する際はもちろん、過去稟議の検索の効率化にも効果があります。備品購入など頻繁に発生する稟議については申請内容をテンプレート化することにより入力の手間を削減できます。また、従来の紙の稟議書では添付書類についても印刷する必要がありましたが、電子稟議だとファイル添付で完了することが可能です。
そして、ワークフローシステムを活用することで、稟議データがシステム上に蓄積されます。保存された過去の稟議内容は簡単に検索することができるため、申請内容や承認・差し戻しの理由についても簡単に参照が可能です。過去の稟議がナレッジとして社内に蓄積されることにより、過去の同様の稟議を参照することもでき、承認の際の判断の手助けにもなりますし、内部・外部監査にもスムーズに対応できます。

テレワークでも決裁が可能に

ワークフローシステムの導入は、在宅勤務などのテレワークが普及している企業にとっても効果が期待できます。
昨今、テレワークを導入する企業が増加していますが、稟議や申請業務が紙ベースでおこなわれているために、出社する必要がありテレワークが定着しないという企業もあります。ワークフローシステムで稟議や申請業務が電子化することで、オフィスに行かなくてスムーズに進めることが可能になります。スマートワークなど柔軟な働き方に対応するためにも、ワークフローシステムによる電子化は有効です。
スマートワークの基礎知識と導入メリットについて

ワークフローシステムによる稟議の電子化も「SmartDB」で可能に

活用事例:トランテックス

トランテックスでは、総務・人事部を中心に300近くの業務が紙で運用されるなど、業務のデジタル化が大きな課題になっていました。紙運用では、部署によって申請書の管理方法が違う、紙から電子に入力し直す作業がある、申請ワークフローの承認までに2週間ほどかかる、コロナ禍でも在宅勤務率が上がらないなど、多くの課題が顕在化していました。
そこでトランテックスは、業務部門(非IT部門)が自らデジタル化できる環境を整えるため、ノーコード・ローコードで開発できるワークフロー開発基盤の検討を開始され、「SmartDB」を採用されました。わずか1ヵ月程度でIT部門の担当者が社内機器の貸与依頼をおこなう業務をデジタル化し、3ヵ月のオンボーディング期間で約30個の申請書やマスタのデジタル化が続々と進みました。
日野グループのトランテックス、300の紙業務を「SmartDB」でデジタル化

活用事例:水ing

2019年8月、水ingは、従業員の働き方や働く場所の制約を取り払い、生産性を向上させることを目的に、システム基盤をクラウドサービスの活用中心に構築する方針を打ち出しました。そして、ワークスタイル変革の実現に向け、クラウドベースのワークフローシステム「SmartDB」を導入されました。
水ingグループは、水ing株式会社を親会社とし、水ingAMと水ingエンジニアリングといった中核子会社を含む、複数の企業で構成されています。
選定においては、個社ごとのワークフローだけではなく、会社をまたぐワークフローの電子化に対応できることが重要でした。また、申請ワークフローと同時に文書管理としての活用可能なWebデータベース機能を有することも評価されました。

水ing、業務デジタル化クラウド「SmartDB」を導入

「SmartDB」:ワークフロー機能

まとめ

いかがでしたか?「SmartDB」では、ただ稟議書を電子化するのではなく、稟議業務そのものの効率化を実現できます。これにより、業務時間の短縮やコスト削減にもつながります。稟議書管理を電子化すれば、承認がスムーズにおこなえるうえ、管理も簡単になります。 進め方に迷われる方はぜひこちらの記事をご覧ください!

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稟議書申請の決裁ワークフロー電子化の壁を破る方法

柔軟なワークフローシステムで複雑な経路もシステム化

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稟議書の電子化で業務改善を検討されているのであれば、ワークフローそのものをシステム化できる「SmartDB」をぜひご利用ください!

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マーケティング本部 上野谷

この記事の執筆者:上野谷 (マーケティング本部)

金融機関に新卒入社し、3年間ほど個人営業、法人融資などの業務を経験。
2020年にドリーム・アーツに入社し、本部-店舗間コミュニケーションツール「Shopらん」のマーケティングを担当。2021年からInsuiteX、SmartDBも担当しています。