RPAとは?初心者向けに業務効率化をわかりやすく解説

昨今ビジネスの現場において注目されている「RPA」について、皆さんはどこまで詳しくご存知でしょうか?
「業務を自動で進めてくれるロボット」として理解しているつもりでも、実際のところは「具体的にどんな業務を自動化できるのか、どんな効果があるのか」を具体的に知らない方も多いのではないでしょうか。本記事では、RPAが注目されている背景から、RPAが得意とすることや導入のポイントなどについて簡単にご紹介していきます。

RPAとは

RPA(Robotic Process Automation)の意味

RPAとは、Robotic Process Automationの略で、人間がPC上で行っている業務を、ロボットが人間の代わりに自動化し実行してくれるテクノロジーを指します。ロボットというと人型ロボットなどが思い浮かべますが、RPAはPC上やクラウド上で動くソフトウェアのロボットで、データの自動入力やレポートの作成などさまざまなビジネスシーンで活用が広がっています。
RPAでは記憶させた作業工程を、現場で柔軟に変更することが可能です。導入後に作業内容の変更があったとしても、変更箇所を現場担当者レベルですぐに修正できる点は、今までのITシステムと大きく違う点であると言われています。

また、マクロとも違って多くのサービスをまたいで自動化することができます。マクロの場合はExcelなど一部のアプリケーションの操作のみの自動化で、プログラミングの知識も必要です。これに対し、RPAはOffice系アプリケーション内に留まらず、さまざまなアプリケーションをまたいで業務の自動化を簡単に実行できます。高度な専門知識も不要です。

そんなRPAは近年、働き方改革や人手不足などさまざまな文脈から注目されています。その背景について、次に説明します。

注目される背景

人手不足

多くの企業では、日本の少子化に伴う働き手の減少から深刻な人手不足に陥っています。特にIT人材の不足は喫緊の課題です。経済産業省が出しているDXレポートでも、2030年には約59万人程度のIT人材が不足すると言われています。この深刻な課題を解決するうえで頼りになるのがRPAです。RPAであればプログラミング知識の無い人でも、簡単なロボットならば作ることができ、ITエンジニアが不足する今の日本において非常に注目されています。また、ロボットは人間と違い24時間365日休憩なしでも働けるので、人手不足の解消や人件費などの節約にも役立ちます。

働き方改革の推進

政府が推進する働き方改革の3本柱の1つに、長時間労働の是正があります。解消のためには生産性向上が必須であると言われており、そこでRPAの活用が注目されています。RPAで業務を自動化できれば、業務量を圧縮できるため社員ひとりひとりの生産性向上につながります。

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RPAができること・できないこと

RPAが得意とする業務は、繰り返しが多くて時間のかかる人間が面倒と感じるような業務です。バックオフィスによくある定型業務や単純作業などが適しています。

できること

1.データの登録・転記

データを決められたルールに従って他のアプリケーションに転記するなど、何度も同じ作業を繰り返し、入力するような単純作業が得意です。簡単な作業であったとしても、それが大量にあるとヒューマンエラーが発生しやすく、ミスを防ぐための確認に多くの手間を取られてしまいます。このような登録・転記の業務においてRPAでは多くの事例があります。人手で1ヶ月近くかかっていた処理時間をRPAの活用で5日にまで短縮し、データの正確性も向上したという企業もあるそうです。受発注系の業務や顧客システムへの情報登録など、多くのシーンでの活用が期待できます。

2.社内外システムの連携と操作

RPAでは社内・社外のシステムに接続して決まった操作を自動で行うような業務も実現できます。またシステムにログインし、指定した条件でデータを抽出したりデータを別のシステムに入力したりするような業務にも対応可能です。RPAは人間の代わりにシステムをまたいだデータの連携が行えるので、データの加工やインポートの手間が一切なくなります。具体的な業務で言うと、SFA(営業支援システム)やERP(基幹業務システム)への入力・報告、金融機関のWebバンキング操作のほか、工数管理システムと勤怠管理システムの連携といった事例があります。

3.インターネット上で情報を収集する

データの登録や転記だけではなく、データ自体をインターネット上から大量に収集することも、RPAでは実現可能です。例えば、自社製品の販売価格を各ECサイトで調査し、Excelにまとめるような業務や株価の調査、自社の口コミ情報の収集を定期的に実行している場合にRPAを活用できます。指定したルールに基づいてインターネット上の情報を収集し、整理した状態でExcelに転記させ、グラフ作成やレポート出力まで簡単に行えます。

4.ルールに基づいたチェック

RPAは決められたルールに従って動くロボットです。そのため、ルールから外れてしまっているデータを検出することにも長けています。あらゆる企業において、顧客データ・発注データ・システムログ・経理処理データなど業務プロセスをすすめるなかでさまざまなデータが存在しています。これらの大量にあるデータのメンテナンスや異常値の検出はビジネスを滞りなくすすめるうえで重要です。しかし、大量データの中から異常なデータを探すことを人手でやろうとすると時間と労力がおおく発生し、正確性も低くなってしまいます。RPAはこのような大量データをルールに基づいてチェックすることが可能です。

5.社内アプリの操作・実行

ワークフローの自動承認、定型文メールの送信、定形レポート作成などもRPAで実現できます。 例えば、経費精算などの業務で申請内容に異常がないかをRPAがチェックし問題がなければ自動承認、確認が必要であれば経理担当者(人)に通知する、といったようなことも可能です。また、毎月発生する大量の請求書メールなども業務の型が決まっていればRPAで自動処理することが可能です。このように、決まったルールに従って自動的に社内アプリケーションを操作し自動で処理することができます。

できないこと

個別のルールが多い、非定型な作業

これまでRPAで業務自動化を実現できることをご紹介してきました。RPAは万能だと思われた方もいるかも知れませんが、実はRPAにも不得意な業務があります。それは個別ルールが多い「非定型」な作業です。 事前にルールや作業手順が設定されておらず、個別の判断が必要な業務や変更が多い業務や、ルールが多い業務などはRPAによる自動化に向いていません。RPAは自ら考えて行動することはできないため、ルールに無いことが起きるとRPAでは処理できなくなってしまうのです。

例えば顧客データの入力業務において、半角数字しか入力できない電話番号欄に誤って漢字の氏名が入力されていたとしてもRPAの場合は、電話番号欄に入った漢字をそのまま入力しようとするため、エラーが起き作業がストップしてしまいます。RPA導入を検討する際は、実現したい業務が定型化されているのかという観点でしっかり見極める必要があります。
なお、近年では、RPAとAIの連携により、非定型作業を自動化できる事例も出てきています。AIが学習を通して人間のように判断することで、非定形な業務でもRPAで滞りなく自動的に進めるという事例もあるようです。

RPAのメリット

RPAを導入することには、どのようなメリットがあるのでしょうか?ここでは、RPAのメリットについてご紹介してきます。

人的ミスが減らせる

大量データの入力や転記作業など、細かな作業を人間が実施すると必ずミスが発生してしまいます。入力箇所がずれてしまったり、誤ってデータを消してしまったり、入力内容をミスしてしまったり…みなさんも経験があるのではないでしょうか?大量データを扱う作業はかなり気を使うため、ストレスを感じてしまい、それがさらなるミスにつながってしまう…といったこともあるかもしれません。
RPAはロボットですので、大量データを決められたルールに沿って正確に実行してくれます。ストレスも感じないため、どんなに退屈な連続作業であっても正確にスピーディーに大量のデータを処理できます。このように、RPAは業務自動化による効率化だけでなく、業務品質を向上させ、それを維持することが可能です。

人件費などの削減ができる

RPAの導入にはコストがかかります。しかし人を雇用するコストと比較すると、一般的にはRPA導入のほうがコストを抑えられると言われています。例えば、月給30万円の社員10名でやっていた業務をRPAで自動化して社員3名で進められるようになれば、7名分のコスト210万円を浮かせる事ができます。この業務に必要なくなった7名の社員はRPAでは実施できないクリエイティブな業務に従事し、売上へ貢献していくことも可能です。また、RPAは24時間365日休憩無しで働けます。ソフトウェアですので、オフィスの環境を整える必要もありません。このように、総合的に見てRPAは人件費を始めとしたさまざまなコスト削減に繋がります。

業務がスピーディーに回せる

人間が手作業で一つ一つ業務をこなすよりも、RPAを活用したほうが遥かにスピーディーに処理することができます。特に繰り返し同じ動作を行うような業務はRPAの得意分野です。人間がやるとミスも発生しやすいためダブルチェックなどで時間がかかりますが、RPAの場合は命令どおりに実行してミスもありません。処理スピードが早いだけでなく、ミスがないことで手戻りも発生しないのがRPAの良いところです。とある金融機関では、RPAを導入して年間3,000時間~4,000時間もの作業時間を短縮した事例もあります。

RPAを導入する際の検討ポイント

これまでRPAでできることなどを紹介してきました。ここからは、導入を検討する際に抑えておくべきポイントについてご紹介していきます。

クラウド型かオンプレミス型か

RPAツールには、大きく分けて2種類あります。インターネット上でサービスを利用するクラウド型と、自社内に専用のサーバやPCを導入・運用するオンプレミス型の2種類です。

種類 特徴
クラウド型 パソコンへのインストール不要。インターネット環境があれば、申し込み後すぐに利用開始できるため、オンプレミスと比較してクイックにスタートでき、安価。
オンプレミス型 自社内のほかのシステムと連携するなど、柔軟にカスタマイズ可能。自社のセキュリティポリシーに沿った構築ができる。

従来は、自社内にシステムを保有するオンプレミス型が主流でしたが、近年では、低コストで使い勝手のいいクラウド型の導入が増えています。BCP(事業継続計画)などの面からも、クラウド型が評価さてれおり、企業や行政機関においてもクラウド型の製品の導入が進んでいます。

自動化したい業務を洗い出す

RPA導入において最も重要なフェーズが業務の選定です。まずは効率化したいと考える業務をすべて洗い出しましょう。その上ですべての業務プロセスを確認し整理していきます。このように、業務プロセスを可視化することで、ムダや課題を見つけて見直しをすることにも繋がります。そのうえで、どの業務がRPAによる自動化と相性が良いかを見極めます。今まで説明してきたとおり、RPAは決められたルールに従って動くロボットです。RPAによる自動化に向いていない業務もありますので、「自動化で効果が出そうな業務」をしっかり見極め、選定しましょう。自動化したい業務を選定できたら、実際にその業務にどれほどの時間がかかっているのか、業務量などを把握しておきましょう。これは効果検証の際に必要となります。

テストで導入してみる

いきなり導入するのではなく、まずはテストで導入しましょう。本当に簡単に業務の自動化が実現できるのか、既存システムとの相性は良いのか、問題なく動くのか、軽微な設定修正を現場レベルでもできるのか。まずは無料トライアルなどでRPAツールをテスト導入し、このようなことを試してみるのが良いです。テスト導入をすることで、誤作動や見落としていた動作、そもそも業務自体の見直しが必要なところが出てくることもあります。本格導入に向けてテスト導入でしっかりと情報収集を行うことが大切です。RPAツールの利用範囲を初期導入フェーズからさらに広げていくことを考えている場合はとくに、テスト導入でしっかりと見極めると良いでしょう。

導入効果を検証する

ツールの使い勝手や自動化した結果などを踏まえ、RPAで自動化する業務として相応しかったかどうかを見極めます。導入効果の検証はRPAのPoC(概念実証)や試験導入時だけでなく、本格導入の前後でも実施すべきです。RPAによって業務がどれ程効率化できているか、数値化して分析・評価します。その結果から、改めて要件などを定義します。導入効果の検証は定期的に行い、RPAの運用体制やロボットの設定・メンテナンスのフィードバックをする仕組みづくりが重要です。導入効果の検証を怠ると、RPAの導入によって得られた効果はあったのか、投資対効果は出ているのか、曖昧になってしまいます。

これらのポイントのほか、RPAツールを提供するベンダーのサポート体制も事前にチェックするとよいでしょう。いざ導入となると、わからないことや進め方に悩むことも多いため、ベンダーのサポート体制は重要です。また、RPA導入でいきなり業務をガラッと変えるのは禁物です。失敗しないコツは、「まず小さく始めて、大きく育てる(スモールスタート)」を意識すると良いでしょう。

まとめ

現在では多くの企業がRPAを導入しています。ただし、すべての業務において、RPAによる自動化だけが最適解とは限りません。トレンドや流行りに乗って導入するのではなく、しっかりと自社の業務を可視化し課題を把握した上で導入を進めていくことが重要です。自社の業務を効率化する際は、RPAを含めさまざまなツールを視野にいれて検討するのが良いのではないでしょうか。

プロモG 藤井

この記事の執筆者:藤井 直輝 (プロモーショングループ)

新卒でドリーム・アーツへ入社。
2021年よりプロモーショングループへ加入。
記事の執筆においては「へぇー!」、「なるほど!」、「そうなんだ!」と思っていただけるような読み応えのある情報を発信しきたいと思います。