OKRとは?MBOやKPIとの違い、目標管理・業績評価の方法を解説

みなさんの所属する企業、組織では目標をどう設定、管理されていますか?目標をただ設定しただけでは、メンバー一人ひとりが意識した状態で目標達成に向け進むことは困難ですが、目標管理手法を用いることで解決できる場合があります。GoogleやFacebookなどシリコンバレーの有名企業も導入し注目されているOKRという目標管理手法についてご紹介します。

OKRとは

OKRは「Objectives and Key Results」(目標と主要な成果)の頭文字をとったものです。高い目標を掲げ、進捗状況を確認できる目標管理手法です。企業、部門、チーム、個人ごとにObjectives(目標)とそれに連動したKey Results(主要な成果)を設定し、設定した目標は会社全体に公開します。そのうえで、目標設定・進捗確認・評価のサイクルを高頻度でおこなっていきます。
設定する目標は簡単に達成できないようなチャレンジングな内容を設定し、100%の達成を目指さず60%~70%の達成で成功とみなします。
O(Objectives)とKR(Key Results)の設定について、詳しくご紹介します。

O:Objectives

Objectives(目標)は、組織が達成すべき目標です。目標の数は基本1つとされていますが、複数の事業をおこなっている場合はそれぞれに設ける場合もあります。目標の内容は、組織のモチベーションをあげるチャレンジングで、約1ヵ月から四半期(3ヶ月)で達成できるような内容にします。そして、シンプルでだれもが覚えやすく、到達点や目標達成時の状態を設定し、維持、継続などの現状維持と捉えられるような表現は避けます。そして、最も重要なのは企業の目標と個人目標がリンクしていることです。

KR:Key Results

Key Results(主要な成果)は、Objectiveを達成するための具体的な指標です。1つのObjective(目標)に対し3つほどの成果指標を設定します。計測可能なもので、実現すれば目標達成に直接結びつくことがわかるような指標を立てます。この成果指標では行動ではなく成果を定義するため、支援、分析、参加、相談などといった行動を表す言葉ではなく、行動によって得られた成果を記述します。成果指標は「むずかしいが不可能ではない」「ベストをつくせば達成できそう」という水準のストレッチゴール(ストレッチ目標)で設定します。そのため達成度は100%ではなく60~70%で成功とみなします。業績評価や人事評価は、目標に向かって取り組むプロセスを参考にし、達成度はそのまま評価に影響しません。

「自信度」を設定する

OKRではKey Results(主要な成果)に対して自信度を設定します。この自信度とは主観的な自信を測る指標のことです。Key Results(主要な成果)に対する自信度は、10分の5の難易度のものを設定することが望ましいとされています。自信度1は「無理、できない」と感じるもの、自信度10は「簡単すぎる」と感じるレベルで、「できないかもしれないが、できるかもしれない」という状態が自信度10分の5の状態を表します。

スコアリングをおこなう

設定した期間の終了後には、振り返りをおこない達成度をスコアリングします。ひとつのKRに対して、なん%(Google社では0.0~1.0)という形式で数値化し、それぞれのKRの平均スコアがOのスコアとなります。
OKRの最適な達成率はおおよそ60~70%です。達成率がこれよりも高い場合は、設定した目標が低すぎた可能性があります。反対に低い場合には、組織が十分に成果を挙げていないか、設定した目標が高すぎた可能性があります。このスコアリングを踏まえ次期目標の設定をおこなっていきます。

ムーンショットとルーフショットの使い分け

みなさんは目標管理の専門用語のひとつである「ムーンショット」や「ルーフショット」という言葉を聞いたことはないでしょうか。これらは目標の度合いを表す言葉です。「ムーンショット」は、「月(moon)に届くほどのショット」という意味で、その名のとおり、非常にチャレンジングな目標を指しますムーンショットは、60%~70%の達成で成功とみなします。OKRではこの考え方で目標を設定します。
一方で「ルーフショット」は、「屋根(roof)に届くほどのショット」という意味で、難しいけれど実現可能なレベルの目標を指します。達成水準は100%を前提に設定され、目標に対する達成率は評価に使用されます。主にMBO型の目標管理法で用いられます。

OKRとほかの目標管理との違い

ここまでOKRの概要について説明してきましたが、次にOKR以外の目標管理法の紹介と、OKRとの違いについて説明していきます。

MBOとOKRの違い

業績評価のための測定ツールとして用いられるMBOとは「Management by Objectives」の略であり、日本語に訳すと「目標管理」という意味になります。MBOは個人またはグループごとで目標を設定し、それに対する達成度合いで評価を決める制度のことを言います。MBOとOKRはどちらも目標管理法ですが、どこが違うのでしょうか。ここでは2つを比較し違いについてご説明します。 MBOの詳細について知りたい方はこちらをご覧ください。
MBO(目標管理制度)とは?メリットや運用の基礎、OKRとの違いを解説

OKR MBO
レビュー頻度 1ヵ月~四半期に1回 半年~1年に1回
測定方法 「SMART」に基づく 組織によって異なる
共有範囲 組織全体 上司と本人
最終目的 生産性の向上 報酬の決定
達成方法 60~70% 100%
レビュー頻度

MBOとOKRの一番の違いはレビュー頻度です。OKRが1ヵ月~四半期といった高い頻度でレビューをおこなうのに対し、MBOでは一般的に年に一度、あるいは半年に一度の頻度で評価をおこないます。

達成度の測定方法

MBOは組織によって測定方法はさまざまですが、定量的、定性的どちらか、もしくは両方を用います。 一方、OKRは「SMART」というものに基づいて測定します。「SMART」とは、Specific=具体的に、Measurable=測定可能な、Achievable=達成可能な、Related=経営目標に関連した、Time-bound=時間制約がある、それぞれの頭文字をとったもので、定量的な測定方法です。

共有範囲

MBOとOKRのもうひとつの大きな違いとして、個人目標の共有範囲に違いがあることにあります。MBOが上司と部下の間で目標が共有されるのに対して、OKRは組織全体で個人目標が共有されます。また、MBOが個人の成果を評価する傾向があるのに対して、OKRは会社全体の目標に向かってどれだけの成果を挙げられたかを重視する傾向があることも異なる点のひとつです。

最終目的

MBOの最終目的は、期間の業績をもとに報酬を決定することです。個々のパフォーマンスにフォーカスしています。一方OKRは、組織全体の生産性を向上させることが目的です。個人ではなく組織にフォーカスしているため、個々の報酬には直接影響しません。

期待される達成水準

MBOは100%で達成とみなします。目標の達成は、報酬に直接関係します。一方OKRは、60~70%で達成とみなしますが、その分高い目標を設定し、達成度が100%の場合には目標が低い、反対に60%以下の場合は目標を高くしすぎていると考えます。

KPIとOKRの違い

ここまでOKRとMBOの違いについてご説明してきましたが、MBOと同じくOKRと混同されがちな「KPI」についてご存じでしょうか。KPIとOKRとの違いについてもご説明していきます。

KPIは「Key Performance Indicators(重要目標達成指標)」の頭文字を取ったもので、組織の最終目標に対して、達成度をチェックするための中間指標です。そのため、最終目標を設定するOKRとは全く異なります。
KPIの達成水準は100%とされており、最終目標に対する達成度が計れるよう定量的な目標を設定します。KPIは部署やプロジェクトチームごとの単位で目標を設定し、共有範囲も部署やプロジェクトチーム内でのみ共有されます。
KPIを適切に設定することで、目標が明確になります。チーム内の方向性が統一され、後に控える最終目標達成のための重要な要素となります。 そのため、OKRで定めた目標を達成するために、定量的な目標をKPIで設定しチェックをおこないながら目標達成を目指すと非常に効果的です。

OKR導入のメリット・効果

続いて、OKR導入にあたってどんなメリット・効果があるのかを説明します。

サイクルが短く、フレキシブルな調整・変更ができる

MBO型では年一回のサイクルで目標に対する測定と目標設定をおこなうのに対し、OKRでは、1ヵ月~四半期でおこなうため、非常にスピーディーにサイクルが回せます。
そのため、目まぐるしく変化するVUCAの時代に非常に適した方法だと言えます。
VUCA(ブーカ)とは何か?不確実性の時代におさえておくべきこと

エンゲージメントが向上する

全社の目標が一人ひとりの目標に落とし込まれ、なお且つ組織全体に目標も公開されることで帰属意識や組織への貢献を実感しやすくなります。そして、目標に向かって取り組むことで、組織内のコミュニケーションが生まれます。また、ストレッチな目標を設定していることもエンゲージメントの向上にも影響を与えます。

すべての従業員が目標を共有するため、タスクの優先度が明確化する

目標の共有により、「主要な成果」に直結するものに対するタスクの優先度が明確化し、より効率的に行動できます。

企業理念やビジョンを浸透させられる

企業目標を個人目標に落とし込んでいくことで、企業のビジョンもよりわかりやすく、組織内に浸透しやすくなります。

OKRの導入~運用方法

ここからはOKRの導入から運用方法について説明します。

企業OKRを設定する

まずは、自社で既におこなっている施策や制度の中で当てはまるものはあるのか、もしくはインクルージョンを推進するにあたって改善すべき課題は何か明確化することが大切です。面談やアンケートを事前に実施し、担当部署がまだ把握していないような問題を顕在化させておくことで効果的な施策をおこなえるようにしましょう。

チームからフィードバックを受けて企業OKRを調整する

企業OKRを定めたら、そのOKRを各部門・チームに展開しフィードバックを受けましょう。そして、そのフィードバックをもとに内容の調整をおこないます。

チーム・部署のOKRを設定・調整・共有

企業OKRが確定したら、企業OKRと連動したOKRをチーム・部署ごとに設定します。企業OKRと同じく、ボトムアップで決定することが望ましいとされています。こちらも必要に応じて整合性をとりながら修正していきます。

個人OKRの設定

チーム・部署のOKRが決定次第、それをベースに個人のOKRを設定します。状況に応じてメンバーに相談しながら決めていきます。

個人OKRを共有し、調整

個人OKRが設定できたら、チーム内で個人OKRを共有し、調整をおこないます。

週に一度進捗確認(チェックイン)

週に一度部署・チームごとに「チェックイン」というMtgをおこない進捗の確認と話し合いを実施します。
「チェックイン」の詳細については後述します。

中間レビュー、最終レビューをおこなう

設定した期間の中間時点で、レビューを全体的におこないましょう。このときの進捗状況に合わせて、議論をおこなったり、場合によっては目標の変更をおこなったりします。
設定した期間が終了したらスコアリングをおこない、各OKRの結果を評価します。達成度が低すぎないか、高すぎないか確認し、要因を明らかにし、今後の目標設定の参考にします。

来期の企業OKRを設定する

最終レビューの結果を参考に、次の期間のOKRを設定します。

OKRを効果的に運用するには

週次で「チェックイン」をおこなうこと

「チェックイン」とは、OKRの進捗状況を確認するための集まりのことです。部署やチームごとに週に一度1時間以内でおこないます。「チェックイン」では、OKRの進捗はもちろん、自信度の確認や更新、OKRの課題はなにか、解決策はあるかなどを話し合います。目標どおりいかない原因について言いわけをする場ではなく、より良い結果を出すために話し合うことが目的です。

OKRの進捗を定量的に確認すること

目標に対しての現状(実績)と、期間内にどれだけ達成できそうか(見込み)を明確にしましょう。

自信度の確認を適宜おこなうこと

OKRでは自信度を設定しますが、目標達成に向け進むなか、実現可能性が見極められてきます。自信度の確認を適宜おこない、目標は状況に応じて変更しましょう。

課題・達成阻害要因を都度分析すること

OKRに対する課題や、目標達成の阻害要因はなにか、都度分析をおこない、解決方法はないか考えることが重要です。チェックイン時にチーム内で相談し合ったり、助け合ったりして解決しましょう。

まとめ

OKRは有名企業が導入しているため注目されがちですが、しっかりと特徴などを理解し自社にあっているか見極めることが大切です。また、OKRは、目標設定・進捗確認・評価のサイクルを高頻度でおこなうため、目標の管理場所や、目標の共有方法、目標の修正方法などを決めておくことも重要です。これらの管理はツールを利用することをおすすめします。実際にドリーム・アーツでは、「SmartDB」を使用して全従業員のOKRを管理しています。こちらの記事で活用方法を詳しくご紹介していますので、ぜひ合わせてお読みください。
OKR管理・運用のポイントとは?SmartDBで管理する3つのメリット、活用事例を紹介

「SmartDB」とは、Webデータベースとワークフローの機能を持ったクラウドサービスです。さまざまな業務アプリケーションを、情報システム部に頼ることなく現場部門が自ら作成できます。OKRなどの目標管理だけでなく、住所変更申請などのバックオフィス業務から、案件管理などフロント業務までカバーでき、全社プラットフォームとして展開できる点が特徴です。

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マーケティング本部 橋本

この記事の執筆者:橋本 (マーケティング本部)

2020年に広島の大学を卒業し、ドリーム・アーツに入社
日々学び、身に付けた知識を少しでも多く皆さんにお伝えし、お役立ちできることを目指して活動中。