近年、インターネット回線の高速化やWebブラウザの進化などIT技術の進歩によって、場所にとらわれず個人で実現できることが増えてきました。たとえば、従来では社内のパソコン一台一台にソフトウェアをインストールしたり、パソコンが故障した際にはソフトウェアをインストールし直したりする必要がありました。しかし、現在はそのような課題で悩む必要がなくなったのです。そして、今回ご紹介するASPはそれらの課題を解決するための手段となり得るでしょう。
ASPとはどういったものなのか、概要やメリット、注意点などに触れつつ解説していきます。
ASPとは
「Application Service Provider」の略
ASPとはApplication Service Providerの略称で、インターネットを通じてサービスを提供する事業者やサービス自体のこと指します。
ASPのPはProvider(提供者)を表しており、もともとはサービスを提供する事業者だけを意味しておりました。しかし、ASPが普及するにつれて、提供するサービス、ビジネスモデルを含む概念へと進化していきました。その影響もあり、事業者だけでなく、サービス自体のことも指すようになったのです。
また、ASPはIT用語として使われるだけでなく、広告業界ではAffiliate Service Providerの略称として使用されることもあります。こちらは混同しないように注意が必要です。
代表的なASPの例
企業向けのサービスだけでなく、私たちが身近に使っている個人向けのサービスも、ASPによって提供されています。たとえば下記のようなサービス例が挙げられます。
<企業向け> | <個人向け> |
---|---|
グループウェア | GmailなどのWebメール |
勤怠管理システム | iCloudのようなクラウドサービス |
給与管理システム | コンピューターウイルス対策サービス |
在庫・生産管理システム | Dropboxのようなオンラインストレージサービス |
テレビ会議・web会議 | |
BI(ビジネスインテリジェンス) |
これはほんの一例にすぎず、例に挙げたもの以外にもありとあらゆるシステムがASPに該当します。
そのほかに企業向けに提供されてきたサービスが、ASPによって個人でも扱えるようになりました。ECサイトがその一例です。ASPによって企業でなく、個人でも簡単にネットショップを立ち上げ、運営することができるようになりました。これは操作方法がすぐに分かり、月額利用制など初期導入費用を抑えて利用できるASPのサービスならではの特長です。
そして、ASPのサービス同士で連携することもできます。たとえばMA(マーケティングオートメーション)とSFA(営業支援管理システム)を連携させることによって、生産性を向上させるだけでなく、精度の高い顧客分析などをおこなうことができます。
ASPの特徴
ASPの特長としては以下の3点などが挙げられます。
利用方法が簡単
UI/UXにおいて洗練されたものが多く、IT技術者でなくても簡単に利用できます。また、操作方法を覚える時間や教育コストなどを削減することも見込めます。
いつでもどこでも利用できる
社内でインスールしたアプリケーションは基本的に社内でしか使えませんが、ASPの場合、ネットワーク環境があればいつでもどこでも利用できます。
たとえば、タブレット端末を用いて顧客との打ち合わせを自宅から行ったり、スマートフォンで申請の決裁を外出中に行ったりすることができます。
複数人が利用可能
特定の一台のパソコンに限らず、複数のデバイスからサービスを利用できます。 その結果、複数人が同時にアクセスして一緒に作業を進められたり、個人で複数のデバイスを使いながら効率的に業務を行えたりします。
ISP・SaaS・クラウドとの違い
ASPを調べると「ISP」や「SaaS」「クラウド」という似た言葉がでてきます。これらの言葉とASPはどのように違うのでしょうか。
定義 | サービス例 | ASPとの違い | |
---|---|---|---|
ISP |
ISPとはInternet Service Providerの略称で、インターネット接続を可能にするサービス提供者のことを指す。 | Yahoo!BB OCN BIGLOBE |
ASPがサービス提供者、サービスそのものを指し、ISPはインターネット接続を可能にするサービス提供者を指す。 |
SaaS |
SaaSとはSoftware as a Serviceの略称でクラウドサーバーにあるソフトウェアを、インターネットを経由して利用できるサービスのこと。 | Microsoft 365 Dropbox Gmailなど |
厳密にはASPがサービス提供者を表し、SaaSがサービスそのものを表す。 また、ASPがシングルテナント、SaaSがマルチテナントで提供される。 |
クラウド |
ASPやSaaSを提供する技術や仕組みのこと。 この仕組みを利用したサービスのことを「クラウドサービス」という。 | Microsoft Azure Google Apps AWS(Amazon Web Services)など |
ASPは「なにをサービスとして提供しているのか」を表し、クラウドはその技術や提供方法などを意味する言葉。ASPよりクラウドの方が意味としてはより包括的。 |
ASPのメリット
開発コスト・ランニングコストの削減
ASPを導入することによって自社でのシステム開発をおこなう必要がなくなり、大幅なコスト削減が見込めます。たとえば、自社の業務体系に合わせたシステムを構築する場合、ソフトウェアを買い、ユーザー側で一から開発しなければならず、膨大な初期費用がかかってしまいます。一方、ASPではすでにサービスが完成しているため、一から開発する必要がないのです。
また、保守管理やソフトウェアのバージョンアップなどもサービス提供をする事業者がおこなうので、サービスを継続的に利用するためのランニングコストも抑えることができます。
メンテナンスの手間がかからない
サーバー管理やセキュリティ対策、システムトラブル時の対応などメンテナンス業務をユーザー側でおこなう必要がありません。これらの業務はサービス提供をする事業者側がおこなうため、ユーザー側ではメンテナンスにかけるリソースを削減することができます。また、ASPは複数のユーザーが利用することを前提としたサービスなので、セキュリティ対策も十分におこなっている場合が多いです。事業者側の定期的なメンテナンスが行われることによって、ユーザーは最新の機能を安心して使い続けることができます。
導入までのスピードが速い
システム導入までのスピードが速いのもASPのメリットの1つです。
ASP以外のサービスでは要件定義やシステム設計、開発、テストとシステム構築をするのに多くのステップを踏まなくてはなりません。そのため、開発期間がどうしても長くなってしまうといったような問題が発生します。しかし、開発工数のかからないASPであれば、サービスを提供する事業者が開発した最先端のシステムをすぐに導入し、利用することができます。
ASPの注意点
安定したネットワーク環境が必要
基本的にASPは、インターネットに接続された状態で利用できるものです。そのため、利用に際しては安定したネットワーク環境が必要となります。たとえば、ネットワーク環境が整っていない地域などでは通信環境が不安定になる場合があります。また、災害時にはインターネットへ接続できず、サービスを利用できなくなる可能性もあります。まずはASPを利用する場所で、インターネット環境があるかどうかを調べておく必要があります。また、災害時に備えてサービス提供者側のBCP(事業継続計画)を確認しておく必要もあるでしょう。
セキュリティ面は提供会社に依存
ASPは、クラウド上でサービス利用者側のデータを管理し、その管理するためのセキュリティ対策などもサービス提供者側のルールに準拠します。大切なお客さまの情報や機密情報の管理を任せるという意味では、情報流出の危険性が自社で管理するより高いです。そのため、セキュリティ対策が万全かどうか事前に確認を行い、信頼できるサービスを選択する必要があります。また、ユーザー側でも定期的に情報のバックアップをおこなうことが重要になります。
機能拡張が難しい
ASPは不特定多数のユーザーや複数の企業が利用することを前提としたサービス形態となります。そのため、細部まで拘った開発には不向きで、機能拡張が難しかったり、各企業独自のルールに則ったカスタマイズができなかったりすることに注意しなければなりません。また、ASPを導入してから、ほかのシステムとの連携が取れないといった問題に気が付く場合もあります。ASPを検討する上では、必要な機能や導入目的を明確にした上で、選定をすることが重要となります。
ASPが提供するSaaSサービスを使って業務効率化
近年、SaaSを提供する企業が増加しています。SaaSは従来のインストール型のソフトウェアに比べ手軽に利用できます。また、SaaSの中でもノーコード・ローコードシステムが増えたことにより、これまで現場での業務改善が困難と思われた分野の業務も今では実現可能になってきています。
「SmartDB」はSaaS型のWebデータベースとワークフロー両方の機能をもつノーコード開発プラットフォームです。部分的に業務をデジタル化して効率化させるだけでなく、業務全体の流れすべてをシステム化するため、根本的な改善を実現。全社共通で利用できるだけでなく、業種や部門問わず現場ユーザーでも簡単に操作することができます。 SaaSを使った業務効率化を検討されている方は、ぜひご覧ください。
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まとめ
いかがでしたか。ASPを導入することによって得られるさまざまなメリットをご紹介いたしました。ASPを上手く使いこなすことで柔軟な働き方や業務コストの削減が見込め、企業のIT戦略促進や働き方改革実現につなげることなどもできるのではないでしょうか。
しかし、本日ご紹介したようにASP導入には気を付けるべき注意点もあります。 そのため、ASPのメリット・注意点を総合的に判断して、検討を進めることが重要となるでしょう。
この記事の執筆者:藤井 直輝 (マーケティンググループ)
新卒でドリーム・アーツへ入社。
2021年よりマーケティンググループへ加入。
記事の執筆においては「へぇー!」、「なるほど!」、「そうなんだ!」と思っていただけるような読み応えのある情報を発信しきたいと思います。