アカウンタビリティとは?意味・使い方・企業において実現させるポイントなどをご紹介

企業に必須で求められるアカウンタビリティ。日本においては「説明責任」と訳されることが多い言葉です。しかしアカウンタビリティと説明責任は同義ではありません。今回はアカウンタビリティの意味や重要性、実現させる方法について解説します。

アカウンタビリティとは

アカウンタビリティは経営者が、株主・投資家・従業員などのステークホルダー(利害関係者)に対して、企業の状況や財務内容を報告する義務のことです。アカウント(会計)とレスポンシビリティ(責任)を掛け合わせアカウンタビリティと呼ばれるようになりました。
経営を委託するステークホルダーと、受託する経営者の間では、会社および経営者に関する情報の量や質に格差があります。このような状況では、経営者が常にステークホルダーの利益を最大化するとは限りません。むしろ利己的行動をとる可能性もあるでしょう。この情報の差を埋めるため、経営者が企業の情報を開示する義務を指す言葉としてアカウンタビリティが定着しました。
さまざまな情報の開示方法がありますが、たとえば、法令で定められた会計情報の開示、株主に企業活動を報告するIR活動、長期的な企業戦略として「コーポレート・サスティナビリティ(持続可能な企業経営)」、企業が担う社会的責任であるCSRの報告書作成などがその代表例にあげられます。
また、アカウンタビリティは「説明責任」と訳されることもありますが、正しくは「説明すること」自体を指すのではなく、その後の具体的なアクションや後の対策を指す言葉であることがポイントです。

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アカウンタビリティとコーポレートガバナンス

コーポレートガバナンスは企業経営に必須の概念です。東京証券取引所が「コーポレートガバナンス・コード」において5つの基本原則を以下の通り定めています。

  1. 株主の権利・平等性の確保
  2. 株主以外のステークホルダーとの適切な協働
  3. 適切な情報開示と透明性の確保
  4. 取締役会等の責務
  5. 株主との対話

「コーポレートガバナンスコード」が示す通り、コーポレートガバナンスは、株主だけではなく、その他のステークホルダーに対しても透明性の高い企業運営をしていくための仕組みです。この対応として、社外取締役や社外監査役など第三者による監視をおこなう企業は多いでしょう。
企業には不祥事を防ぐだけでなく、長期にわたる価値向上が求められます。そのためにアカウンタビリティが重要になってきます。とくに、5つの基本原則のうち「3.適切な情報開示と透明性の確保」と「5.株主との対話」には、アカウンタビリティが求められる分野といえます。
コーポレートガバナンスについては、こちらの記事で詳しく紹介しています。ぜひあわせてご覧ください。

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アカウンタビリティとレスポンシビリティの違い

アカウンタビリティは「成果責任」、レスポンシビリティは「実行責任」とも呼ばれます。この2つの言葉の違いは、責任を負う対象にあり、アメリカでは、プロジェクトマネージャーは「アカウンタビリティ」、メンバーは「レスポンシビリティ」として捉えられています。レスポンシビリティは実行責任であるため、実行するメンバーなど複数人が共同で責任を負うことができます。一方で、アカウンタビリティは、成果の説明責任あるいは成果責任があるリーダーが責任を負うことになります。
アカウンタビリティは「結果に至るまでの責任」を指し、対話・説明のみならず、リーダーとしての対策の実施までを含む実効的な概念といえるでしょう。

アカウンタビリティの使い方事例

企業におけるアカウンタビリティとは、経営者がすべてのステークホルダーに対し、その活動内容や権限行使の予定など企業情報を報告する責任を指します。では、実際「アカウンタビリティ」という言葉を使う場面はどのようなものか、使い方を例文で紹介します。

  • 「この問題については、アカウンタビリティが果たされているとは言いがたい」
  • 「言い逃れをすることがアカウンタビリティではない」
  • 「積極的にアカウンタビリティを果たしてこそ、消費者の信頼を得られる」
  • 「企業の規模が大きくなるほど、アカウンタビリティも重くなる」
  • 「株主総会では、アカウンタビリティが重視される」
  • 「経営者は経営状況を説明してアカウンタビリティを果たすべきだ」

企業におけるアカウンタビリティの重要性

ここではアカウンタビリティの重要性を3つに絞って紹介します。

1:ステークホルダーとの適切な関係性を構築

機関投資家や株主といった社外のステークホルダーは、投資に影響する意思決定や判断に必要な情報が欠落していない状態を求めています。アカウンタビリティによる適切な情報と成果の開示は、ステークホルダーからの理解を深めることに貢献し、適切な関係性を構築することにつながるでしょう。
また、世間が企業に向ける視線は、近年特に厳しさを増しています。特に2000年代以降、企業の不祥事が相次いで報道されたことにより、企業経営における透明性はさらに重視されています。
アカウンタビリティによって透明性が担保され、ステークホルダーに安心感が生まれれば、結果、株式の長期保有などにもつながっていき、企業の中長期的な発展に寄与します。信頼の獲得だけではなく、企業の成長にもアカウンタビリティは重要といえます。

2:社会的責任

法律で決められた範囲外の情報のなかにも、ステークホルダーにとって重要なものは多くあります。そのような情報の発信や説明をすること、責任を持っていくことは、企業活動をするうえでの責任を果たす良い機会です。社会のCSRや環境への関心の高まりを受けて、CSR報告書や環境報告書などの必要性は年々増しています。
そのほか、たとえば社会問題やSDGsなどに取り組んでいることなど、社会が持つ課題・問題についてどのように向き合っているのか、という情報も自発的に開示しましょう。

3:社内の納得感

社外だけでなく、社内へのアカウンタビリティも重要です。社内に向けて、透明性を担保した情報開示や説明責任を果たすことで、従業員への納得感が生まれます。情報開示範囲や内容に差がある社内では、従業員間で意思決定にばらつきがでたり、業務効率や生産性が落ちる問題もでてきます。適宜、社内へ情報開示していくことは、コーポレートガバナンスが強化にもつながり、より健全な組織を目指すことができるでしょう。
また、透明性の高い企業には人が集まりやすいといわれます。自社の取り組みついての情報開示を社内へ積極的におこなうことは、採用活動でのアピールにもなります。

企業がアカウンタビリティを果たさないリスク

次に、アカウンタビリティを果たさなかった場合に想定されるリスクを紹介します。

法律違反

企業に対しては、会社法などの法令によって、財務情報などを開示する義務が課せられています。法令で決められているアカウンタビリティを果たしていない場合、会社法の開示義務違反となる可能性があります。たとえば、上場企業は金融商品取引法にもとづき、有価証券報告書や監査証明を受けた財務諸表を金融庁に提出しなければなりません。非上場企業にも決算報告は求められます。
会社法で、株主総会招集通知に計算書類と監査報告書の添付が要求されていることに加え、金融証券取引法に基づき、有価証券を発行・上場して不特定多数の株主・投資家から資金を調達する場合は、財務諸表と監査報告書を含む有価証券報告書を作成および開示することが義務づけられています。
このように、法令順守という面においてもアカウンタビリティを果たす必要があります。

資金調達への影響

投資者は、企業が開示している情報をもとに投資判断をします。開示情報に透明性や納得感がなければ投資はおこなわれず、企業側は資金を得られないということになります。上場している企業はもちろんのこと、事業の拡大・成長のために資金調達の実施を考えるベンチャー企業などにとってもアカウンタビリティの影響による資金変動は重要な考え方です。
アカウンタビリティの重要性でも紹介通り、法律で定められた範囲外の情報を公開する企業も増えてきました。こうした企業による自主的な情報開示は、投資家や顧客からの信頼の獲得、最終的には企業の成長につながります。より良い影響を受けるためにアカウンタビリティを果たすことが求められます。

報道リスク

情報がコントロールできていない状態が続いてしまうと、報道によるリスク発見・責任追及の機会が増えてしまいます。もし不祥事が発生し報道されれば、その情報をきっかけに、顧客離れにつながることも考えられます。開示されている情報が少ないと、持たない情報を補うために憶測による誤った情報が拡散されるリスクもあります。
とくに企業の周辺の住人や自然環境などに影響を与える可能性がある企業は、アカウンタビリティの意識が低いと、メディアなどで問題視される機会が多くなるため注意が必要です。

企業でアカウンタビリティを実現させる方法

従業員への意識付け

まず第一に、従業員にアカウンタビリティの意識を浸透させることが重要です。従業員に業務の結果を報告させ、成果が良い場合は成功事例として次に生かします。成果が悪い場合は、問題の要因や課題発見を報告するように意識付けしましょう。要因と改善策の報告を意識付けさせることで、アカウンタビリティを無意識におこなうことができるようになります。
また、内部統制においてもアカウンタビリティを意識します。内部統制では、企業が活動するうえで守らなければならない法令や基準、規範を遵守できるように体制を整備する必要があります。アカウンタビリティを果たさなかった場合、法令違反になるリスクがあることを前述しました。内部統制における体制整備の際にも、アカウンタビリティを意識するよう、従業員への浸透は必須です。

実証と検証の習慣づけ

アカウンタビリティの実現には、自主的にアカウンタビリティを果たそうとする思いを持ったうえで、課題発生の背景・改善に向けた取り組みや方針を簡潔かつ明瞭に説明できる人材の育成が必要です。普段の業務から、上司は部下が失敗やミスをしたときは、一方的に叱るだけでなく何が原因なのか、どんな部分を次回は注意すべきなのか、実証と検証を重視した業務姿勢の習慣づけをしていきましょう。

人事評価体制を整える

一方的に従業員に対してアカウンタビリティを求めても浸透しません。アカウンタビリティをおこなうためには従業員1人1人の意識が必要です。人事評価体制を整え、アカウンタビリティの意識度を確認したり、成果を出していれば適切な評価をおこないましょう。
たとえば、アカウンタビリティによる報告で成果を出していれば、評価を上げて待遇などに反映させ、業務で失敗した場合にも正確にアカウンタビリティが果たせていれば、評価をプラスにするなどの仕組みを作ることで、従業員のアカウンタビリティに対するモチベーションを維持します。

内部統制の仕組みを整える

企業活動において透明・公正な意思決定がおこなわれていることを説明する為には、意思決定の過程を可視化する必要があります。企業不祥事を防ぎ、業務の適正を確保するための社内体制、「内部統制」の仕組みも整えましょう。

内部統制についてはこちらの記事もご覧ください。

内部統制におけるワークフローシステム導入のメリット

まとめ

アカウンタビリティについて解説しました。説明責任と混同されやすいキーワードですが、その実は説明責任を果たすための行動がポイントです。アカウンタビリティを果たすと簡単に言っても、企業にとっては非常に重大な課題になります。
アカウンタビリティは企業の上層部だけが意識するだけでは達成できません。経営層だけではなく、従業員を含めた企業全体でアカウンタビリティやコーポレートガバナンスを正しく理解し、内部統制の適正な施行によって企業の信頼と価値の向上に取り組みましょう。

また、その際に意思決定などに関連する文書(業務文書)や情報が各部署に散乱していたり、管理方法が煩雑になっていると正しくアカウンタビリティは果たせません。ドリーム・アーツが提供する「SmartDB」は、業務に関連するあらゆる文書の一元管理に貢献する文書管理システムとしても活用できます。こちらの資料で文書管理のコツや事例を紹介しているので、ぜひあわせてお読みいただければ幸いです。

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この記事の執筆者:斉藤(マーケティング本部)

通信サービス・コンタクトセンター運営などの経験を経て、2021年ドリーム・アーツに中途入社。マーケティング本部の一員として日々勉強中です。
たくさんの経験をしてきたことを活かし、誰が読んでも楽しめるコンテンツを目指して、今後もたくさんの情報をお届けします!