Excelはその抜群の使い勝手の良さから、さまざまな組織・業務で活用されています。しかし汎用ツールではないため、対象業務によっては機能や処理効率に課題が生じる場合があります。本記事ではExcel業務でどのような課題が発生するのか、そしてその解決方法を紹介します。業務でExcelを活用されている方はぜひご参考ください。
エクセル業務の課題
同時更新ができずデータ共有や共同作業が難しい
Excelには、データベースシステムのように、複数ユーザーから同時にひとつのファイルを矛盾が発生しないように更新できる機能がありません。従ってひとつのファイルを複数ユーザーで共有する場合、あるユーザーが更新中のファイルは他ユーザーが更新できないようになっています。だれかが業務でリストやマスタ類を開いている間は他者が更新できなくなりますので、多人数で業務をおこなっている場合は非常に非効率になります。 古いバージョンのExcelでは「ブックの共有」を使って同時更新ができるようになっていました。しかしさまざまな機能制限があり、かつ複数ユーザーからの同時更新や競合を管理する機能もありませんでしたので、現バージョンでは特別な設定をおこなわないとこの機能は使えなくなっています。
複数のファイルをまたぐデータの同期や更新が難しい
業務によってはさまざま情報を組み合わせてリスト化したいときがあります。たとえば商品の売上管理用に「商品売上台帳」と「商品マスタ」を組み合わせることができれば、商品マスタ上の商品単価などの商品情報が変わった場合、商品売上台帳に自動的に反映させることができます。Excelそのものには複数ファイル間のデータを同期する機能がありません。従って上記のように同期して組み合わせて使う場合は、関数を使って関連付けるしか方法がありません。この方法だと、関連付けるデータ数やファイル数が少なければそれほど問題にはなりませんが、いずれかの数が増えてくると動作が極端に遅くなる場合があり、実用に耐えなくなる可能性があります。
さまざまなファイルが乱立し属人化する恐れがある
Excelファイルは特別なスキルを持っていなくても作成できます。そのぶん、さまざまなファイルが乱立してしまう恐れがあります。そうなると同じような内容のファイルが複数存在して、どのファイルが最新なのか、どのデータが正しいかがわからなくなる恐れがあります。ファイルやそこに保存されているデータの管理が個人に委ねられることになり、データの信憑性や整合性を客観的に保証できなくなります。これが業務品質に悪影響を及ぼすことになるかもしれません。また、フォーマットが必ずしも統一されているわけではありませんので、必要なデータがどこに存在するのかがわかりにくくなり、業務効率が低下します。
情報検索に時間がかかる場合がある
Excelには複数のファイルをまたぐ情報を横断的に検索する機能がありません。従って、目当てとする情報がどのファイルに存在するかがはっきりしていない場合は、候補となるファイルをひとつずつ開きながら検索していくしかありません。業務によっては、同時に複数ファイルからの情報が必要な場合も多く、このような業務では特に作業効率が悪くなります。関数を使って関連するデータを同期して一箇所に集める、という方法も考えられますが、上記にも記したとおりレスポンスが極端に遅くなる可能性があるため、必ずしも効率良く検索できるようになるとは限りません。
エクセル機能を活用して業務効率化をおこなう
ショートカット・関数の活用
ショートカットや関数を活用することで、作業の効率化が図れる旨を記載してください。可能であれば、ショートカット・関数の例を5個程度入れてください。 Excel独自のショートカットや関数を活用することでExcelでの作業を効率化することができます。代表的なものを紹介します。
ショートカット
ショートカット | できること |
---|---|
[Ctrl]+[スペース]または[Shift]+[スペース] | [Ctrl]または[Shift]キーを押しながら[スペース]を押すと、選択されているセルの列選択または行選択ができる。 |
[Ctrl]+[Alt]+[V] | 「形式を選択して貼り付け」ダイアログが直接開く。 |
[Ctrl]+[1] | 書式設定用ダイアログが直接開く。 |
[Ctrl]+[D]または[Ctrl]+[R] | [Ctrl]+[D]で下方向へコピー、[Ctrl]+[R]で右方向へコピーできる。 |
関数
関数 | できること |
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COUNTIF関数 | 検索条件に一致するセルの個数をカウントする。 |
SUMIF関数 | 指定した検索条件に一致するセルの値を合計する。 |
SUBTOTAL関数 | 指定範囲の最大値や平均値、合計値などさまざまな集計ができる。 |
VLOOKUP関数 | 先頭列の値を検索して一致した行の任意の列の値を返す。(通し番号が付与されたリストの検索などが簡単にできる) |
VBAの活用
VBA(Visual Basic for Applications)は、ExcelやWord、PowerPointなどで使用できる簡易プログラミング言語です。Excelで操作手順を記録・再現できるマクロは、このVBAを使って記述されています。毎日繰り返し実施する作業や、大量のデータ処理が必要な作業などをこのVBAで記述しておくことで、作業が大幅に軽減されます。また、手入力がなくなることで入力ミスを防ぐことにもなります。条件分岐などにも対応していますので、単純作業のみではなくデータの内容によって異なる作業を割り振らなければならないような処理も可能です。ただし、簡易とは言ってもプログラミング言語であることは変わりありませんので、自由に使いこなすには一定以上の学習時間が必要になります。
エクセルやめどきチェック
以下のチェックリストで、当てはまるものが 3つ以上ある場合、その業務はExcelでの管理が適切ではなく、Webデータベースでの管理に移行することで、効率化につながりやすい業務です。脱Excelを検討している業務が該当するか、参考にしてみてください。
☑Excelやめどきチェックリスト
大容量・複雑なデータ処理
□1.取扱い行数や容量が1シートの上限に達し、複数シート・ファイルで同一項目の情報を管理している
□2.Excelファイルを開くのに時間がかかり、業務が滞ったことがある
□3.操作の処理スピードが遅く、待機時間が長いため業務に支障が出ている
□4.ファイルが重くなり、破損したことがある
複数人・部署での編集
□5.情報がリアルタイムに更新されず、業務が滞ったことがある
□6.編集の履歴を追えず、いつ・誰が編集したのかわからなくなったことがある
□7.誤って重要なデータを削除されたうえ、原因究明が困難だったことがある
□8.データごとに権限設定を行えず、役職や部門ごとに資料をわけて管理している
データの転記・チェック作業
□9.商品情報などを業務や担当者ごとのファイルで利用時に、転記作業が発生する
□10.入力漏れやミスが発生しやすく、チェック専用の担当者や業務が存在している
メンテナンス
□11.Excel関数やVBAなどのマクロ機能を使いこなせる社員が少なく属人化する
□12.Excel関数やマクロ機能のメンテナンスが難しく、業務の変化に対応できない
脱・エクセル、ほかITツールを比較
データベースツール活用
データベースは共通のフォーマットでデータを格納して、データの整合性を保ちながら複数のユーザーがデータの閲覧や更新ができるようにする仕組みです。現在でもさまざまな業務に活用されており、たとえば商品情報の管理・更新や顧客情報の管理・共有など、多くのスタッフが共通の情報を扱いながらおこなうような業務に特に力を発揮します。特定業務で使用する業務アプリケーションでも、実はそのアプリケーションの背後でデータベースツールがデータの読み書きを担っていることがほとんどです。 複数ユーザーから同時更新される前提で設計されているツールなので、無用な待ち時間やデータ矛盾などを起こすことはまずありません。データが一元化され全社同一基準で管理されるために、同じようなものが乱立したり、属人化してしまうこともありません。さらに、マスタ類や台帳類などの複数のデータ群を関連付けたり同期をとることができるため、情報検索や更新のスピードも格段に向上します。
RPA活用
RPA(Robotic Process Automation)は、人がパソコンやその他システムを使った操作を自動化できるツールです。前述のVBAはExcelやWordなどのOfficeソフト内の操作のみが対象ですが、RPAはそれ以外の操作や作業も自動化できます。たとえば「売上管理システムから前日の売上データをダウンロードして、それをExcelに取り込み売上速報レポートを毎朝作成する」のような多少複雑な処理でもRPAなら対応可能です。 RPAは、毎日定型的におこなう作業や大量のデータを対象にする作業、また、突合せチェックやデータコピー作業など、人為ミスが起こりやすい作業などの業務効率化や品質向上に特に有効です。対応範囲が広く自動化する業務範囲も臨機応変に選択できるRPAツールは、近年さまざまな企業から提供されており、使い勝手の良いツールであることから、導入する企業が増えてきています。
Python活用
Python(パイソン)は注目されているプログラミング言語のひとつです。ディープラーニングなどのAI開発向きの言語として脚光を浴びましたが、「分かりやすく簡潔にプログラムが記述できること」や、「ライブラリ(汎用性のあるプログラム集)が充実していること」などから、AI開発以外でも広く活用されるようになってきました。また、文法が覚えやすいこともあり、初心者向けの言語としても向いているとされます。 Pythonには「OpenPyXL」というExcel向けのライブラリが提供されており、Excelの表を作成したりセル編集などさまざまな操作を自動化することができます。プログラミング言語なので汎用性は広いですが、自由に使いこなすにはPythonを習得する必要があります。初心者向けとは言われていますが、習得のための最低限の時間や労力を要します。
Webデータベースを導入してエクセル業務の課題を解決
データの一元化で共有や連携が容易に
Webデータベースは、データベースをクラウド上などに置きブラウザからデータ閲覧や更新、集計などのさまざまな操作ができるようにした仕組みです。データの格納場所がクラウド上に一元化されることで情報共有や連携が容易になるのがWebデータベースの大きな特徴のひとつです。複数のユーザーが同時利用する前提で設計されているので、どのユーザーからでも矛盾や不整合のない正しいデータを素早く得ることができます。また、インターネットやクラウドを通じてさまざまなアプリケーションとの連携も容易に実現できるのもWebデータベースの利点と言えるでしょう。
【参考】業務デジタル化クラウド「SmartDB」が連携可能な他社SaaS一覧
情報検索の手間を大幅に削減
Webデータベースのもうひとつの大きな特徴が、情報の検索が容易なことです。Excelの場合は、複数のファイルにまたがった情報を横断的に検索する機能がないために、検索する情報が含まれるファイルがわからない場合には、一つひとつ候補となるファイルを開いて検索していかなければなりませんでした。Webデータベースでは情報が一元化され、必要な情報との連携もできるので、さまざまな種類のデータを一括で検索できるようになります。これにより、Excelを使用していた時のような無駄な手間をかける必要がなくなります。
メンテナンス時間や情報を探す時間をゼロにして、業務効率をアップ!
「SmartDB」を活用してWebデータベース上でデータを一元管理することで、Excel作業の際に必要だった情報更新時の待ち時間や、膨大なファイルのなかから情報を検索する時間が不要になります。空いた時間で本来おこなわなければならない業務にさらに集中できるようになれば業務効率が大幅に向上し、より多くの業務成果を得ることができます。
まとめ
Excel業務では、複数ユーザーからの同時更新ができず、複数ファイルをまたぐデータの同期や更新が難しいなどの課題があります。業務を効率化するには、ショートカットや関数、VBAなどのExcelの機能を活用する方法や、データベースツールやRPA、PythonなどExcel以外のITツールを活用するという選択肢もあります。
しかし、そのようなITツールを利用するには特定の知識が必要になります。「SmartDB」のようなノーコード・ローコード開発のWebデータベースを導入すれば、比較的容易にExcel業務で発生していた課題を解決し、業務効率をアップさせることができます。
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この記事の執筆者:岩瀬(マーケティング本部)
人材会社にシステム職として入社し、サービスのシステムインフラを構築・運営を経験後、営業支援業務やマーケティング業務に関わる。2022年ドリーム・アーツに入社。